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命の神  作者: oto
一部 一章 "三日月は昇る"
19/35

19 "どたどたどたどた"

 「魔力が存在してるって、どういうことだ?」


 「どうにもこうにもねぇよ。この秋峰は世界で一つだけの、魔力が存在していなくて使うことが出来ない場所だろ。」 

 「そこに魔力があるってことはそのシステムがぶっ壊れてるってことだよ。」


 魔法技術が全く発展していない場所、これは誰かが一方的に魔法を使用し、当たり一帯を支配することも容易になっているということだ。

 それはこの秋峰の「魔力を使わず人々の安寧を約束する」という理念に反することになる。

 これが魔力による自然災害や事件の被害を受けて、秋峰にすがる様に移転してきた者達に知られたらどうなることか。


 「これが発覚したら単なる騒ぎじゃあ収まらないぞ。」

 

 「いまいち実感が沸かねぇな。」


 今は魔力にほとんど関わっていなかった人々の多くは気気付けない人が大半だろうが、ある程度時間が経てば気づかれてしまうだろう。


 取りあえず今は目の前のことに集中するか。


 「今は先を急ごうぜ、家族のほうが心配なんだ。」


 「あぁ、でも奴らの姿が見当たらねぇ。三階に移動して探そう。」


 駆け足で階段を上がる。雨漏りで水溜まりができていて、足が滑りそうになっていた。


 三階に到着する、だが誰も見つからない。


 「くっそ、なんでいねぇんだ。奴らからの着信もないし。」


 友親は苛立ちを覚えながらも懸命に探す。病室を探し回り、外を確認し便所から更衣室まで、ついでに涅巴のホームセンターで新調したバッグの中身も隅々まで探した。


 「見つからねぇ、4階に移るぞ。」


 「おい、少し落ち着けって。」


 苛立ちと焦りから冷や汗をかいて遂には瓦礫に躓いて転んでしまった。


 「これで落ち着けるかよ!なんでいねぇんだよ!」


 「…しょうがねぇなぁ。」


 涅巴は友親の頭に手を置き、目を瞑る。そして久しぶり身体にみなぎる魔力を身体中に循環させる。

 身体に血を巡らせるように、己の核から肩へ腕へと押し流す。流された魔力は形を変え、涅巴の思い通りの早さ大きさとなって手に到着する。


 『日が落ちるように』


 魔法とはイメージだ。人それぞれの思想と感覚により詠唱も出力も違ってくる。


 『夜の静けさのように』


 二言の短い詠唱、それが涅巴なりの詠唱だ。


 手から発せられた魔力は詠唱により形を持った魔法となり友親の頭に降り注ぐ。

 激しさはなく、ただただ落ち着いた優しい力だ。


 「…どうだ、落ち着いただろ?」


 「おぉ、落ち着きはしたよ。いまのが魔法か?」


 「そうだ。まぁ、我流の人を落ち着かせることしか出来ない魔法だがな。」


 力強く流した魔力を急速に減速させ、相手に与える、本当に「落ち着く」をそのままイメージして作った涅巴の最初の我流の魔法である。


 「さて、休憩は取れたみたいだし、4階にレッツゴーだ!」


 涅巴はルンルンと言いながら階段の方向に歩いていく。


 「涅巴!」


 なんだ?と言いながら後ろを振り向いた。


 「ありがとう。」


 「どういたしまして。」


 少し照れくさそうに言っていた。






 ハエが羽音を立ててたかっている。

 

 2人は4階に上がってから再び奴らと家族を探していた。手分けをすると危険だからという理由で行動を共にしていた。

 そして一つの部屋を見つけた。四人収容可の大きめな病室だ。それとこの部屋に目をつけた理由が一つある。

 血痕だ。


 「なんなんだよ…これ。」


 死体だ。おびただしい程の流血、腹や頭が大きくえぐれる様に破壊されている。

 当然こんな形で人体を破壊することなど何らかの兵器を使わなければ不可能、現在の日本では銃火器などを勝手に使用することはできない。ならば、他にそれを可能とするものは言えば、


 「魔法の弊害がこんなにも早く…?」



 いくらなんでも早すぎる。魔法が使用出来るようになったことなど、ここまで早く気付けるものか?


 「こいつ…杉本だ。あの電話にでてきたヤツだよ。」


 大部分が削がれているが顔はかろうじて確認出来る。凄まじくグロテスクだ。


 「…っ、菫!お袋!」


 友親が声を荒げ母と妹と思わしき名を呼ぶ。だが返事は返ってこず、ただただ静粛が辺りを支配する。


 「っておい、そんな大声で叫んだら…!」


 ここは殺人現場なんだぞ!


 どたどたどたどたどたどたどたどたどたどた


 何かが大きな足音をたててこちらに向かってくる。


 どたどたどたどたどたどたどたどたどたどたぁ


 明らかに人間では発せない足音をたてながら。


 どたどたどたどたどたどたどぁたどたどたどたぁ


 「これ、何が来て…」


 どたどたどたどどたどたどたたぁどたどたたぁ


 それが足音ではないとは気づく頃には、


 ぁああどたどたどだただだりゃ


 もう逃げることなど到底できなかった。






 「「ぎゃあああああああああ!!!!!

!」」


 にげる、にげる、ただただ逃げる。

 ナレーションが「逃げることなど」なんて言っていた気がしたがそんなこと気にせず全力で逃げる。

 

 「なんなんだよあれぇぇ!!!」


 「しらねーよ!友親が何もいねぇって言うから少し安心して付いてきたのに!」


 『どたどたどだどたどたどだだた利ぁ』


 「めちゃめちゃ前足歩行してるお化けいんじゃねぇかぁ!!!!!」


 『どたどたどだだ縺セ縺ヲ縲∽ココ縺ョ蟄舌h』


 「なんかしゃべってるし、けど聞き取れねぇ!」


 長く伸びた体毛と思わしきものを、ゆらゆらと揺らしながら追いかけてくる。

 オマケに「どたどた」と意味不明な言葉と思わしきものを発しながらだ。

 

 「あっ」


 剥がれた床のタイルに躓き、顔面を地面に激突させながら止まる。


 「涅巴!」


 「あしが、もう、うごかねぇ。」


 日頃の運動不足がここでも祟り、体力不足からまた動けなくなってしまっていた。


 『繧?▲縺ィ霑ス縺?▽縺?◆』


 すぐ目の前に化け物がいる。

 

 『縺雁燕縺ッ隱ー縺?』


 「はは…こわくねぇぞ…こわくない…怖くないんだからね!」


 『莉翫☆縺舌↓遶九■蜴サ繧後?縺雁燕驕斐↓蜊ア螳ウ繧貞刈縺医k縺、繧ゅj縺ッ縺ェ縺』


 「やっぱ怖ぇ!何言ってるかわからないから尚更怖ぇ!」


 パサァ


 瞬間、飛び散る白い物体、それはキラキラと光を反射しながら化け物と涅巴に降りかかる。


 「…しょっぱいな、なんだコレ。」


 「オラァ!!!」


 いきなり友親が前に出てきて化け物に膝蹴りを打ち込んだ。


 「調子乗ってんじゃねぇぞゴラァ!!」


 追撃に、相手がよろけたところで助走をつけ、おおきく振りかぶった拳を顔面と思われる場所めがけて無理やりぶち込む。


 「おお、意外ってまき塩って効果あるんだな!」


 「めっちゃくちゃ物理攻撃が効いてた気がするんだけど。」


 化け物の動きが止まった。直立したまま一歩も動かない。少し小刻みに震えていた。

 

 「…?」


 その震えは段々と大きくなり、全身の体毛が膨らみだして揺れ動く。


 「…ヤバいかもな、これ。」


 そして、化け物の体毛で覆われた顔面から大きな目と口が姿を現し、大きく怒号と共に動き出す。


 『話を聞けやゴラァ!!!!』


 「「しゃべったぁぁぁぁ!!!!」」

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