14 "理解"
スマホのアラームが軽快な音楽を流しだし、設定された時刻を告げる。
朝か、
昨日の夜からずっと眠れず起きていた。
眠気はあるにはあるのだが、昨日のあいつの言葉と行動が忘れられず、目を瞑っても頭が動くことを止めようとしない。
何故あいつはあんな顔をしたんだろう。オレに対しての失望か、もしくは…、
いや、それよりも考えなくちゃいけないことは沢山ある。まずはあいつ等に渡す人間を探さなくちゃいけない。あいつ等がなぜ人間を欲しているのかはわからない、まぁ人身売買だったりするんだろうな。
電話が鳴る。応答すると怒鳴り声が聞こえる。
『おい!てめえが連れてきたガキにげやがったぞ!』
やはり開放されていたわけではないのか。
つまり一人であの縛られた状態から逃げだしたということか、案外タフだな。
『オマケに仲間を一人"殺していきやがった"!お前が運動が苦手なやつって言って連れてきたはずだろ!』
「は?」
殺した?あいつがあのごろつきを?
『首を思いっきり裂かれてたよ、乗ってた車も爆破されて廃車だ。』
あいつそんなヤバイ奴だったのか?そんなやつに俺は手を…
『…おい、聞いてんのか、おい!返事しろや!』
『来週までに賠償金含めて800万もって…』
電話を勢いに任せて切る。
まずいまずいまずい…、昨日で家は知られた…報復に…いや、昔みたいに半殺しにすれば…だめだ、返り討ちにあうかもしれねぇ…。
また着信、さっきから無視していたが、気になってしまって結局応答する。
またあいつらか?いい加減しつこいぞ。
「今は忙しいんだよ!催促は後に…」
『よう、昨日ぶりだな。』
その声を聞いて絶句する、なにせ今1番聞きたくない声なのだから。
『なんだよ、いきなり静かになって、疲れてんのか?』
昨日犯罪に巻き込んだ張本人が電話の向こうにいるというのに、なぜここまでいつもどうりに接することかできるのか。
『とりあえず、今から峰川の河川敷まで来てくれ用件はそこで話す。』
『来なかったら、わかるよな?』
電話は来る来ないの有無を言わせぬようにか切れてしまった。
「あぁ、くっそ…」
「俺はどうすりゃいい?」
「来てくれるかなぁ。」
今にも雨が降りそうな曇り空、人を呼び出すには不相応な天気だ。
涅巴は河川敷の丁度上に橋のある場所を選び、そこで友親を待っていた。
暗く、蜘蛛の糸が張り巡らされていてゴミだらけ。汚くて近寄りがたく、人気の少ない場所だが、かえってそのほうが話しやすいだろう。
「考えてみりゃ不良共に一度売ったやつになんて、警戒して近寄らないか。」
俺は友達を一人失ったのか、唯一の友達を。
ため息をつき、バッグを探る。すると、なにやら茶色い物体がパックに詰められた状態で出てきた。
「こいつを顔にぶん投げてやろうと思ったのに。」
なんだか悪巧みをしているようだ。
「こんな所にいてまた不良共に鉢合わせたらどうしようか……よかった来たのは友達の方の不良だ。」
「…」
土手を下ってくる男が一人、友親だ。動きやすそうな服で右手にバットを持っている。
「よし来たな。でもなんでバットなんて持ってんだ?野球やるのか?」
「んなことわかってるだろ。その前に用件を言えよ。」
友親の警戒した様子に涅巴はニィと笑って応える。
「茶化しただけだよ、それじゃ本題に入ろうか。」
先程とは打って変わって真剣な表情だ。しかりと、友親の目を見てはっきりと話す。
「何が目的だ?」
ポツポツと雨が振り始める。
「お前に言う筋合いは無い。」
数秒の沈黙、橋の上を通る車の音と雨が地面と川に降り注ぐ音だけが続く。
「えぇ?それじゃ呼び出した意味がねぇじゃん。」
「ん?」
「もういいや、雨も降ってきたし帰ろーぜ。」
「な、」
友親に背を向け歩き出す涅巴、思ってもいなかった想像の斜め上をゆく反応に友親の身体が一瞬止まるが、すぐ動き出す。
そのまま涅巴の肩をつかみ引き戻そうとするが。
「やばい、囲まれた。」
そこにいたのは十数名の男たち、いずれもあのクラブのような場所にいた者たちだった。




