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命の神  作者: oto
一部 一章 "三日月は昇る"
13/35

13 "嘘"

 

 手足が動かない、目も開かない。

 

 体が小刻みに揺れ、オマケに体の所々が痺れている。

 

 状況が理解できない、頭がちゃんと働かない。

 

 口に何かが押し込められているような気がするがそれが何なのかもわからない。


 突然大きな音と共に怒号のようなものが飛び交う。


 この音は…車のクラクションの音か?

 

 再び体が揺れ始め、今どこにいるのかがなんとなくわかってきた。


 なるほど、ここは車の中か。


 手足が動かないのは紐のようなもので縛られているからで、目が開かないのは目隠しのせいだ。


 つまりこれは……


 嫌な考えが能に浮かぶ。


 誘拐か…


 十中八九そういうことだろう、ここまで厳重な拘束がしかれているとなると常習犯による犯行か、いや、慣れたやつは目立つような行動はさけるか。


 今すぐにでもここから逃げ出したいところだが、周りがどういう状態か確認できない限り下手な行動は出来ない。


 苦悶していると何やらはなしごえが聞こえてくる。


 「んなこと言われてもなぁ、それを決めるのはこっちなわけだし。」


 車を運転している奴の声か?多分電話をしているんだろうが。


 「あまり口答えしてるとこっちも手を出さなきゃいけなくなってくるんだよねー。」

 「……家族の命は惜しいだろ、さっさと次の奴用意してこい。」

 

 なんだか危険な匂いだ。


 「お、気がついたか。」


 男は涅巴に声をかけてくる。


 「よう、体縛られてキツイとおもうが、頑張れよぉ。」


 これはどこに向かってるんだろう、ろくでもない場所なのは確かだが、このままだと危険だ。


 「大人しくしておいてくれればお家に返してやる……うぉぉ、なんだこいつ!車がッ。」


 !?


 男が声をあげたと思えば、爆音と共に体が吹っ飛んだ。


 床に体を強く叩きつけられる、その衝撃で口にはまっていた猿ぐつわのようなものが外れる。


 「いっってぇ……」


 目隠しもいつの間にか外れている、それにこの場所は…


 わからない、何処だここ。一見倉庫みたいだが…


 そんなことよりも何が起きた?眼の前で燃えている先程まで乗っていたと見られる車と横には電話をしていた男っぽいやつが倒れている。


 まだ手足の拘束が解かれていない、どうにかしないと…

 一応周りを見渡すがそんな都合よく紐を切れるようなものは……あった。


 自分の後ろに丁度良くハサミがある、それで紐を切ろう。


 手の拘束をとった後足の拘束もとる。


 こんな都合が良いことが続くのは日頃のおこないがいいおかげかな。


 気を取り直して、男に近寄り生死を確かめる。


 「……死んでるな。」


 思わず吐きそうになるがぐっとこらえた。


 首が刃物で切り裂かれている。だが一滴も血が流れていない。傷口が焼かれた様になっている。

 車から放り出された影響によるものか、全身がアザだらけだ。骨折もしているだろう。


 「こうなると事故じゃなくて他殺かな。」


 確実にこれはただの人間にできる技じゃない。


 「つまりここは街の外か。」


 だが何故俺だけ生き残れた?道具は全て引っ越しの際に捨てたというのに。


 いや今はここから逃げるのが得策だろう。どんなやつがこの場に潜んでいるのか分からない。


 涅巴は足早にその場から立ち去っていった。







 「おい!どういうことだ、話が違うぞ!」


 つい不満が漏れて大声を出してしまう。


 「クソが!!」


 しばらく暴言を吐いたあと、やっと頭が冷えてきた。


 「騙されたのか?これが終われば家族には手を出さないって言ってたじゃねぇか。」


 彼の名は倣城友親、涅巴の友人であり、涅巴をはめた張本人だ。

 

 「とりあえず要求どうりに誰かカモ見つけて差し出さねぇと…」


 誰か騙されやすいやついたか?オレ知り合いすくねぇし…


 「……妃蝶しかいないか…」


 他のやついないか探さねぇと…


 そこで自分に久しぶりに聞いた声がかかる。


 「あれ、久しぶりだね友親くん。菫ちゃんは元気かい?」


 「…!恩三郎さん…」


 車から顔を出してきたのは恩三郎、奇しくも涅巴や妃蝶の親であった。


 「…顔色が悪いよ?体調がすぐれないのかな。」


 「いっいや、オレは…」


 「それと確か涅巴君と出かけてるって話だったよね?実はさっきから連絡が取れないんだ。」


 「その…あいつは…」


 「俺ならここにいるぞ。」


 思わずバッと振り返る。そこには先程奴らに連れ去られたはずの涅巴がいた。


 「!?なんで…」


 「ごめんごめんトイレが混んでてさ、かなり時間掛かっちまった。」

 「ケータイの充電が切れてたから、連絡に気づけなかったよ。」


 「なるほど、こっちも心配したんだからね。次からは気をつけること。じゃあもう遅い時間だし家まで送ってくよ。」


 そういうと恩三郎は車に戻って行った。


 「なんで…」


 涅巴は少し寂しそうな顔をして言う。


 「なんでも何もねぇよ。自分で考えて見たらわかるんじゃねえか?」

 

 そうして涅巴も車の中へと入っていった。

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