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命の神  作者: oto
一部 一章 "三日月は昇る"
12/35

12 "信頼と矢"


 ラーメン屋をでてから数分後、膨らんだ腹を擦りながら友親について行っていた。


 「よし、腹も膨れたところだし次どこ行くか考えようぜ。」


 「んなこと言われても俺はこのあたりのこと知らねぇぞ。」


 ある程度はこの町での生活に慣れてきてはいるが、それでもたかが数日だ、疎いのには変わりない。


 それに秋峰での生活は周りの街とでは勝手が違いすぎる、"今まで当たり前にできていたことがまるで出来なくなる"のだ。


「なぁ、ダーツとかのゲームって好きか?この近くにいろんな遊びが出来る店があるんだよ。」


 「やったことないな。だけど興味はあるかも。」


 やっぱり難しいのかな。ダンディなおっさんが嗜んでいるイメージがある。


 それを友親がやっているイメージが沸かない、頭使ってスマートにやれる様な奴でもないだろ。


 「興味があるなら行ってみようぜ、運動みたいなモンでもないからお前でも出来ると思うぞ。」


 友親はどんどん道を進んでゆく、こころなしか壁に落書きが多くなってきた気がする。


 今はまだ昼過ぎだからまだ良いものの、夜中に来たらごろつきに絡まれそうだ。人気が少ないし、ヤンキー共にはカツアゲの穴場になっているに違いない。


 ふと、先日ジュースが話していたことを思い出した。


 『あっそうだ、最近南秋峰商店街の外れに街灯の少ない暗い場所があるんだけどぉ、そこには一人や子供だけでは入っちゃいけないわよん。』


 『そこは危ない人たちのたまり場になってるからね、興味本位で入っちゃダメよ、オネェさんとの約束ね♡』


 …明らかにココじゃねぇか。


 なら速やかにここから撤退するべきだ。


 そう友親に伝えようとしたが、もう遅い。おそらく目的地であろう場所に着いてしまっていた。


 誰が見てもザ・不良の溜まり場である。オマケに悪趣味な外装だ。はっきり言って入りたくない


 「おい、本当に此処に入るのか、明らかに危ない雰囲気だぞ。」


 「たいじょぶだって、オレ何回も来てるから。」


 友親は慣れたように扉を開け中へ入って行く。最早覚悟を決めて入るしかないようだ。


 「お邪魔します…」


 涅巴は軽く深呼吸をし、店の中へと入っていった。






 「わぁ、明らかに未成年がきちゃいけない場所だぁ。」


 これはクラブってやつなんだろうか、多分違うんだろうけど。


 「よう、倣城クン、今日はお友達を連れてきたみたいだな。」


 ぞろぞろと大柄な男たちが出できた。髪を染めて体中にピアスなどのアクセサリーを身に着けている。


 危険な香りがプンプンするぜ。


 「涅巴って言うんだな、まぁ楽しんでいけよ。」 


 名前を聞いた後すぐに何処かへ消えていってしまった。ひとみしり…であって欲しい。


 「なぁ、ここ店なんだろ?お金払わなくて大丈夫なのか?」


 「後払いだよ、とりあえずダーツやろうぜ。」


 ほらっと渡されダーツの矢と謎の外国産と見られるお菓子のようなものを渡された。


 手本見せてやるよ、そう言って軽く矢を投げると18のマスにヒットした。


 「まぁこんなもんだ、取りあえず01の301から始めようぜ。ってルールがわかんねぇか。」


 「説明よろしく。」


 「まず基本の得点だな、ダーツの中心から扇状に広がっている奥にあるナンバーがそのマスに対応する得点になる。」「つっても場所によっては得点が倍になったりするんだ。黒と白と赤と青のマスがあって一番端の赤と青のマスが得点が2倍になるダブルで、半径としたときに中心となる赤と青のマスが3倍になるトリプルだ。」「真ん中のマスはBULLっていって50点、その周りの赤のマスは25点になるぞ。」


 なるほど、20のトリプルが一番得点が入るだろうが、狙うのが難しそうだな。BULLの50点を狙っていったほうがいいだろう。


 「次に01のルールだ、簡単に言うとどちらが先に0点に出来るかを競うゲームだ。最初は301や501の点数が設定されていて、それから出した得点を引いていって最後にぴったり0点にしないといけないぞ。」「0点を超えてしまったときにはそのセットで引いた点数は全て元に戻ってしまうから、大きい数をだせばいいというわけではねぇんだ。」


 「よし、説明はこんなもんだな、早速始めようぜ。」


 一セットで投げられる矢は3本、投げ終われば相手と交代か。


 先程もらったお菓子を食べながらマトを見つめる。


 投擲する位置からマトまでの距離はざっと2mとちょっとか…、当てるだけならそこまで難しい距離ではないな。


 どちらが先行かをじゃんけんで決め、指定位置に立つ。


 ちなみに今回は負けてしまったので後攻だ。


 「それじゃ、お先に…」


 友親の手から放たれた矢は、弧を描く様にまっすぐとマトの中心に突き刺さった。


 「しゃあ!BULLだ!」


 「初っ端から50点かよ、うまいな。」


 続いて2射目、先程より下にずれて19点に命中した。


 「ちょいとずれたな、もう少し下ならトリプルだったんだけどよ。」


 友親は経験者ということもあってかかなりの実力だ。顔からも余裕が感じられる。


 3射目は先程よりも右にずれ、3点という結果に終わった。


 「うし、じゃあお前の番だ。」


 友親のターンで合計72点の得点、残りは229点だ。


 交代して指定位置に立つ、後ろで友親の『頑張れよー』という気の抜けたような声が聞こえる。


 よし、さっさと終わらせてここから出よう。友親がいるから何かされるということは無いだろうが、先程の男が物陰からこちらを見ているようだ、嫌な予感がする。


 「とりあえず、主体的にBULLあたりを…あれ…」


 体がふらつき床に倒れてしまう。


 「ありゃ、1ゲームくらいなら出来ると思ったんだけどな。」


 友親の声が聞こえる。頭がクラクラとする。


 「騙してゴメンよ、何も言わずに寝ててくれ。」


 頭が、へんで、前が、みえ…


 そのまま涅巴は気絶してしまうのだった。

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