11 "食は命の要である"
「列長っが。」
ラーメン屋について早々目にしたのは長蛇の列、という訳でもない。太った男達と仕事の休憩にきたであろう作業服のおっちゃん達、それらのおりなす小さめの列だ。
「そんなでもないだろ。」
「俺は列には並びたくないタイプの人間だ。」
「まぁ並ぶ価値はあるぜ、病みつきになるしな。」
「仕方ない、並ぶか。」
よく見たらここ二郎系じゃねぇか。俺が少食だってこと知ってるだろ。
不満気に友親を見ると意図を察したのかにっこりと笑って言う。
「大丈夫だよ、食いきれないならおれが食うから。」
まぁいつも弁当2個持ってくるこいつなら大丈夫か、と思考を放棄すると、後ろに並んでいる太った男達の話しが聞こえてくる。
「フフッ此処が噂の爆盛二郎でつか、腕がなりまふねぇ…」
「沖田氏はずっと同じこと言ってるでござる。」
「腕より腹が鳴ったでふ。」
「斎藤氏はやかましいでござる。」
「我が右腕に宿る神を喰らいし暗黒竜が腹をすかせてうなっとりまふねぇ…」
「沖田氏、そっちは左腕でござるよ。」
ここまで典型的なオタクは初めて見たかもしれない。
「食券買うぞ。」
食券か、色々あるな。
「お前はとりあえず小ラーメンにしとけ。小でもかなり多いから。」
そうこう買っている間に自分の番が来たようだ。
「そうだ、コールわかるか?わからないなら俺がやってやるが。」
「すまん頼めるか?」
「あぁいいぜ、任せとけ。」
…今こころなしか友親が不敵な笑みをうかべたような?まぁ、いいか。
「食券見せてください、麺はどうしますか?」
「普通でおねがいしゃす。」
なんかこいつこなれててうざいな。
席に座るといつの間にか用意されている水やレンゲ。
「レンゲつかうだろ?」
「おぉ、ありがと。」
なるほど、ここじゃセルフサービスなのか。やっぱこいつ慣れてるな、俺がキョロキョロしている間に色々済ませてきやがる。
「水足りなくなったらこれ飲め、ここじゃ持ち込み有りだからな。」
出されたのは烏龍茶しかも黒烏龍、胃にまで気を使ってくるか。
それにしても汚い店だ、ラーメン屋特有の油っぽい床、傷だらけの壁、壁に貼られている段ボールで作られたメニュー表、ほんとに飲食店かここ。
「ひさしぶりだな、ここ。」
「よく来てたのか、かなり慣れているようだけど。」
「中坊のころ野球部の奴らと一緒によく来てたんだ。高校では絡まなくなっちまったんだけどよ。」
「そろそろだな…」
「そろそろ?」
定員が出てきて言う。
「右から二番目の方、にんにく入れますか。」
俺のことか、えっとどうすれば
「こいつはにんにくカラメで。」
友親が言ってくれた。何を言ってるのかはわからないが。
「隣の方、にんにく入れますか。」
「ニンニクマシマシアブラカラメヤサイマシマシで。」
うん、もっと何言ってるかわからないやつがきた。
「いまのどうゆう意味だ?」
「にんにくと野菜を多めにした。」
なら最初からそういえばよくね?なんで長くした?
「はいニンニクカラメです。」
「おぉ。」
小を頼んだはずなのに普通のラーメンよりでかいのがきた。ぎりたべきれるかな…
「はーい、ニンニクマシマシアブラカラメヤサイマシマシでーす。」
「は?」
器が見たことないほどでかいラーメン、スープが溢れそうなほどにひたひたで、野菜を山の様に高く積み上げ、その周りに無理やりでっかいチャーシューが3つ乗ってけてある。
友親は慣れた手つきで箸とレンゲでひっくり返す様に混ぜていく。
涅巴も見様見真似で混ぜていく、だが隣が気になって進まない。
「うまそー、いただきまーす。」
でっかい一口、そこから猛スピードで麺をすすっている。
気を取り直して涅巴もラーメンを食べ始める。
「うっま…」
ドロドロとしたスープが麺が絡み、豚の油の旨味が口いっぱいに広がる。
そこからは無言、ただひたすらに麺をすする。野菜を無理やり口に詰め込み水で押し流す。
そこに最早雑念は無く、服にスープが飛び散りようとも、ただ眼の前のラーメンを食らうことだけを考える。
そして、気づくときには、
「ごちそうさまでした。」
あれだけ少食だった涅巴がいとも容易くラーメンを平らげた。"スープを一滴も残さずに"。
「おっ、食い終わったか、んじゃいくべ。」
山の様に積み上げられたラーメンはすでに全て平らげられていた。
「おしぼりわすれんなよ。」
「くいすぎた…もうはいらん…」
「そりゃあスープ全部飲み干してたしな、早死するぞ。」
「お前は涼しい顔してんね…」
「そりゃあ大食いだしな。」
「じゃあもう一杯いけるか?」
「流石に無理」
二郎系ラーメン恐るべし、また行こう。
使い終わったおしぼりを指定の場所に片付けることをお忘れなく。




