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第二幕

 「さ、侍……だと……? ふざけた名前してるドラ! 許さねぇキュラっ!!!」


 「ふざけてなどいない。そして侍は職業の名称、拙者の本名は侍太郎(さむたろう)でござる。日いづる日ノ本の国から大海を渡り、貴様ら吸血鬼を成敗しに馳せ参じた、趣味は散歩、好物は納豆と団子、身長と体重は……」


 「ええい! うるさいドラ!! 名乗る程のものではない、とかほざいてた癖にしっかり自己紹介しやがって!!! ぶっ殺してやるキュラ!!!」


 吸血鬼が物凄い速さで侍太郎に襲い掛かる。


 「ぬぅん!!!!!!!!!」


 「ぎゃあああああああッ!!!!!」


 それを華麗に回避し残りの腕に一太刀浴びせる。斬られた腕は宙を舞い、力無く地面に落ちた。


 「く、くおぉおお!! 俺様の腕が……!!」


 「勝負があったな。貴様の悪行もこれが仕舞いでござる」


 片膝をつく吸血鬼に侍太郎は刀を突き立てる。しかし、彼は怯えるどころか不敵な笑みを浮かべていた。


 「勝負があった? ドラキュララ! 何寝ぼけたこと言ってるキュラ?」


 「ぬん? ……どういう意味だ?」


 「知りたいドラか? なら教えてやるキュラ! これがッ!! 最強生物吸血鬼の真骨頂だドラッ!!」


 吸血鬼がそう叫ぶと、切断面から流れる血、吹き飛ばされた腕の血が、地を這い空に舞ってまるで肥溜めに群がるコバエの様に彼の腕に集まってくる。


 そして見る見るうちに形を成し、何ということだろうか、腕が完全に再生したのである。


 「ドラキュララ! これこそが吸血鬼の真骨頂だキュラ!! 他者の血を吸い生きる俺様達にとって、自分の血の操作なぞ簡単なことなんだドラッ!!!」


 「ぬぅん……! なんと奇妙な術でござる」


 「そして血の操作とは単に肉体の再構築だけじゃあないキュラ! くらえっ!!」


 吸血鬼は鋭利な牙で自らの下唇を噛む。一瞬血が滲んだかと思えば、それが氷柱のような先が尖った物質となり、無数の血の槍が侍太郎目掛けて飛んでくる。


 「ぬぅん! ぬぅん!!」


 侍太郎は刀を振るいソレを切り払う。最後の一本を切り終えた後、目の前にいた筈の吸血鬼の姿が無いことに気が付いた。


 「ドラララララッ!! 空中(うえ)からお前を串刺しにしてやる!! 死ね! 必殺“誉れ高き血族の槍ブラッティ・ロンギヌス””!!!!!」


 自身の爪に血を凝固させ、両手を合わせ一つの槍に見立てたまま侍太郎目掛けて急降下してくる。その速度は先程の攻撃の二倍、否、五倍以上はあるだろうか。凄まじい速度であった。


 侍太郎も慌てて刀を構え直すが時すでに遅しか、命を貫く血槍が眼前にまで迫って来ていたのだ。


 「あーん! お侍さんが殺されちゃうぅ!!」


 「侍さん! 危ない!」


 「お侍さーん! お侍さーん!」

 

 逃げ惑う足を止めて戦況を見つめていた住民達も堪らず声を出してしまった。侍太郎が負ければ自分達も終わる。街の運命が決まる最終局面、最後に笑うのは侍太郎かそれとも吸血鬼か。


 果たして。





 

 「ぬぅんッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」




 「ぎゃあああああああああああああッ!!!!!」




 斜め下から振り上げた見事な一太刀は、吸血鬼の身体を両断した。華麗過ぎるその太刀捌きは正しく侍にしか出来ない所業であった。

 


 「こ……こんな、“ぬぅん!”しか言わない奴に! この俺様がぁああああああ!!!!!」


 生命の根源である心臓さえも両断された吸血鬼は、その身体を保つことが出来ず黒い粒子となって夜の闇に離散していく。最期の粒子が消え入ったのを見届けた後、侍太郎は刀を鞘に収めた。


 


 「ぬぅん……! これにて一件落着でござる」

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