宝箱
「すごい…ですね」
ミカさんが息を飲む。
ミカさんだけではない。
私も含めてその場に居た全員が、声を出すことも出来ないまま、眩い宝石に見入っていた。
「これは大発見です…!」
暫くして、ミカさんが感嘆の声を漏らす。
「ですが、隊長。この量の宝石が見つかったとあっては…」
「これは、国王に報告するまでは外に漏らさない方が良さそうですね」
多すぎる宝は時に争いの原因になる。
ミカさんは信頼のおける人間を先に帰し、国王に報告へ向かわせた。
全ての判断が素早く、適切だった。
「(凄い…)」
本当に彼女は十九歳なのだろうか。
「さて。問題はこの宝箱ですね」
ミカさんと私は、宝箱に目をやった。
宝箱は大分長い間この場に置かれていたようで、隊員たちが悪戦苦闘しながら宝箱を開けようとしている。
「隊長。この中に入っているのは、例の宝石かもしれません」
ミカさんが頷いた。
私は、今にも宝箱の前に飛び出したい気持ちを必死に抑えていた。
もしこの中身が例の宝石だとしたら、元の世界に帰れるかも知れないのだ。
「隊長!開きました!」
「そうですか、中身は…」
「宝石です!青い光を放つ…なんて美しい…」
宝箱を開けた隊員の一人が、宝石に手を伸ばす。
「異世界に飛ばされますよ!」
今にも隊員が宝石に触れようとした瞬間、ミカさんが叫ぶ。
「は、はい!すみません!」
隊員は慌てて手を引っ込める。
「どう?」
私が聞くと、ミカさんは宝箱を恐る恐る覗き込んだ。
「はい…!間違いありません!これは…これこそが、私達の探していた『異世界に行く宝石』です!」
『私達の』探していた。
そうだ。
この探検隊は元々、この宝石を探すために結成された隊なのだ。
つまり、この宝石は私の手には渡らないということだ。
私は雇われであって、探検家の一員ではないのだから。
「やりました!これで利子さんを元の世界に返すことが出来ます!」
「え…?」
ミカさんの言葉に、その場にいた全員が喜びの声をあげた。
明日から、投稿時間が18時になります。