勇者の闘い
「勇者のパーティーの皆さんって、どんな人達だったんですか?」
再び歩き始めると、ミカさんがそんな事を聞いてきた。
まあ、ミカさん田舎から出てきたらしいし、知らなくても無理ないか。
「勇者は、一言で言うと鬼」
「鬼…ですか」
「うん。他の人はよく知らない」
正直、勇者以外のメンバーとはほとんど話さなかった。
まだこの世界に来たばかりのことだったし、何より別の世界からやって来た謎の娘に向こうも警戒したのか、あまり私に話しかけてこなかった。
あの経験があってから、私はむやみに元の世界の話をしなくなった。
「魔王を倒す冒険に出る前、勇者に半年間みっちりしごかれたんだけど。何度も死ぬかと思ったし、私が殺してやろうかと思った」
「こ、殺…」
「でもさあ…あいつがいなかったら多分、私は何も出来ないまんまでのたれ死んでたから、感謝はしてる」
「そうですか…それは良かったです」
ミカさんは、そう言ってなぜか嬉しそうに笑った。
勇者との訓練の後は、いつも立ち上がれない位に消耗していた。
それまで私のやっていた訓練なんて、準備運動程度にしか感じない程だ。
「この程度の攻撃も避けられないのか。異世界人はひ弱だな」
「殺す…いつか私が殺してやる」
「いいぞ、その気持ちが大事だ。ただでさえ弱い異世界人なんだから、それくらいの気持ちでやらなければ魔王なんて倒せるもんか」
私がどれだけ怨み節を溢そうが、勇者はそんな事を言って笑っていた。
そう、勇者はいつも笑っていた。
勇者が怒っているのを聞いたのは、たった一度だけだった。
「人間を…ドラゴンを…散々ひどい目に会わせやがって…!貴様だけは、俺がぶっ殺してやる!」
魔王と対峙した時、勇者は見たこともないような怒りの形相でそう叫んだ。
その時私は、初めて勇者の本気を見た。
本気で怒り、本気で戦う勇者を見た。
永遠とも思える死闘を制したのは、勇者の方だった。
魔王を倒した後、勇者は「倒したぜ」と言って、ようやくいつものように笑ったのだった。