ドラゴンと私
「ねえ!僕の故郷を助けてよ!君強いんだよね!」
冒険者として活動していたある日のこと。
ある満月の夜に、宿泊していた宿の窓から小さなドラゴンが入り込んできた。
「何、いきなり窓から入ってきて…え、ドラゴン?」
「お願いだよ!早くしないと、僕達ドラゴンはもう終わりなんだ!」
魔王の手下の一人が、ドラゴンの町を襲い占領している。
奴らの目をかい潜って人間の町にやってきた小さなドラゴンは、私に故郷を救ってくれと頼み込んだ。
「他の人は?」
「この町のギルドに行ったら、今この町で一番強いのは君だと聞いたんだ!一刻も早く故郷を助けに行きたい!お願いだよ!」
こんな話を聞いて断るような冷たい人間ではない。
私はすぐさま支度をして、小さなドラゴンと共にドラゴンの町へと向かった。
ドラゴンの町で支配していた魔王の幹部の部下を倒した結果、どこからか聞こえてきた『声』に魔王の幹部がいる城へこい、と誘われた。
しかも、私と小さなドラゴンの一人と一匹だけで。
小さなドラゴンは、まだ生まれて半年ばかりの幼い子供だった。
彼の名前はレッドといった。
彼の家族は反対したが、レッドは私と共に行くと言って聞かなかった。
たった二人だけの半年間の旅は、それは過酷なものだった。
異世界からやって来た人間と、幼いドラゴン。
行く先々で奴らの配下のモンスターに襲われ、心が折れそうになった時、励ましてくれたのはいつだって、共に旅をしたレッドだった。
半年後、幹部をようやく倒した時に、レッドに言われた言葉は今でも覚えている。
「僕はあと二年もすれば、君を乗せて空を飛べるくらいには大きくなる。そうしたら、今度は僕が利子を助けに行くよ」
彼の言葉に、「期待してるよ」と返した。
ドラゴンの町にレッドを帰し、私の始めての大冒険は終わった。
その後も色々な騒動に巻き込まれていていたのもあって、あれ以来ドラゴンの町には足を踏み入れていない。