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とある英雄の伝説

むかしむかし、ドラゴンの住む山の奥に、こわいまおうがお城を作りました。


まおうは、ドラゴンたちをいじめて、むりやりドラゴンたちの町からいちばん近いところにあったにんげんのまちをおそわせました。


にんげんたちはとてもびっくりしましたが、これはおかしいと思いました。


ドラゴンとにんげんは、とてもなかがよかったからです。


ドラゴンたちに話を聞くと、ドラゴンたちは、おそろしいまおうによって、自分たちの女王さまがつかまっていることをなきながら話しました。


なんとまおうは、ドラゴンたちがにんげんのまちをおそわなければ、女王さまをころしてしまうとまで言ったのです。


にんげんたちはおこりました。


もちろん、ドラゴンたちにではありません。


心やさしいドラゴンたちにひどいことをした、おそろしいまおうにです。


しかし、まおうはとてもつよく、ドラゴンたちですらかなわないくらいです。


「それなら、ぼくが行きます。ぼくが、なかまたちといっしょに、わるいまおうをたおしてみせます」


声をあげたのは、一年まえにいせかいからやってきたという、とあるぼうけんしゃの男でした。


そんなことできっこない、とまちのひとたちは口ぐちにいいました。


けれど、ぼうけんしゃは「そんなこと、やってみなければ分かりません」と言って、なかまたちといっしょに、ながいたびに出たのでした。




「絵本では可愛らしいものですが、現実はもっと残酷です。ドラゴン達は殺された仲間を目の前で見せつけられ、貴様らもこうなりたくなければ人間を滅ぼせと命令されたのです」


「そんな…」


「そして、ドラゴン達は人間に攻撃をしました。人間達は、絵本にもある通り、最初は困惑したといいます。ですが、何者かに脅されていることはすぐに分かりました。優しいドラゴン達は、町を壊しても人間を殺すようなことは出来ませんでしたから」


「…」


私は、前に行ったドラゴンの町を思い出した。


大きな体に立派な翼を持ち、大空を優雅に飛ぶ、美しい種族。


けれど、私の住んでいた世界の想像するドラゴンとは違い、炎も吐けなければ大風も起こせず、鋭い爪もない。


あの優しく気高い彼らが、そんな事をさせられたなんて。



そりゃあ、ルークもあれだけ魔王に怒るわけだ。


「そして、ミカさんのご先祖達…伝説の英雄達が、魔王を倒すための旅に出たんですね」


「はい。この先の冒険は『英雄伝説』をご存知でしたら、説明はいらないと思います。実際の冒険も『英雄伝説』の絵本とほとんど変わりなかったようですから」


絵本では、英雄達が冒険を進めながら、行く先々で魔王の手先と戦い、人々を救っていく様子が綴られている。



そして、絵本の最後には、ついに魔王と対峙した英雄達が、皆で力を合わせて魔王を倒すのだ。



絵本の最後の方には、こんな一文がある。



『まおうをたおしたえいゆうは、まおうがかくしていたふしぎな石のちからで、もとの世界にかえっていきました』



この本が真実だとすると、英雄が魔王に立ち向かった理由はきっと…。



「英雄も帰りたかったのかな。元の世界に」

私の呟きに、ミカさんは優しく笑った。


「きっとそうです。そして、私の先祖もきっと、『英雄』を元の世界に帰らせてあげたかったのかもしれません」


今となっては分かりませんが、とミカさんは言葉を付け足した。

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