異世界から帰りたい!
私こと美月利子は、気が付くと異世界にいた。
あれから三年。
勇者のパーティーに入って一緒に魔王を倒したりだとか、人の言葉が分かるドラゴンの子供と一緒に世界を救ったりだとか。
とにかくこの三年間、色々な事があった。
元の世界に帰れるかもしれない、という宝石があると知ったのは、ある有名な探検隊の皆さんと宝探しの旅をしていた時。
私達探検隊一行は、未知のお宝が眠っているという洞窟に向かっている最中だった。
「そういえば、知ってますか?異世界に行ける宝石の話」
「異世界に行ける宝石?」
探索に入る前のお昼休憩中。
例の洞窟の前でそんな話をしてくれたのは、探検隊の隊長を務めるミカさんだった。
ミカさんは十九歳の女性だ。
この世界でも、この年で隊長をやっているのはかなり珍しい。
なんでも探検家である父の影響で、齢十歳の時には探検家として活動していたということだ。
そのせいか、私とあまり年は変わらないはずなのに、かなりしっかりしている。
「そうです。何でもそれを使えば、この世界とは違う異世界に行けるらしいんです」
「そんなものが…」
努めて冷静に返答したものの、私は心の中で興奮を押さえ切れなかった。
異世界に行ける宝石。
それさえあれば、日本に…元の世界に帰れるかもしれない。
思えば、帰る方法を探すため、色々な手を尽くした。
ダンジョンに行ってみたら帰る方法が見つかるかも知れないと思い、ギルドに登録して冒険者になった。
ランクが高い実力者になれば、多くのダンジョンに行けると知り、冒険者になってから、たった一人でひたすらトレーニングを積んで、何とか最上級のA級冒険者になった。
ある時は、ドラゴンの子供と大冒険をした。
宿屋の窓から入り込んで来た、あの頃はまだ手のひらサイズだったドラゴンの子供。
あの子の故郷を救うだけのつもりが、まさかドラゴンという種族全体を救うことになるなんて、思わなかったけれど。
かわいかったな。
あの子、元気にしてるかな。
またある時は、魔王を倒すために勇者に誘われて、勇者の仲間の一員として勇者と共に旅をした。
ひょっとしたら、魔王を倒せば元の世界に帰れるかもしれないと思ったりもした。
しかし、世界を支配しようとしていた魔王を倒した後も、私は元の世界には帰れないままだった。
他にもいろんな冒険をしたけれど、結局元の世界に帰る方法は見つからなかった。
ずっと帰りたくて、でもどうやっても帰れなかった。
正直、もう諦めていたけれど、その宝石があれば。
やっと、元の世界に帰れるかもしれないんだ。
「でも私、そんな話始めて聞いたけど…」
「そうだと思います。私の生まれ故郷に伝わる古い伝説ですから」
「伝説…なんだ」
「でも私は、きっとこの世界のどこかにあると信じているんです」
あからさまに落ち込んでしまった私に気付いたのか気付いていないのか、ミカさんはそんな事を言った。
「それに、私達はその宝石を探すためにこの洞窟へやって来たんですから」
彼女は、私の方を見て子供のように笑った。
その無邪気な笑みに、私はかつて一緒に旅をした、幼いドラゴンの事を思い出した。