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イオタちゃん


 前回までのあらすじ

 ヌシ界で、オワリ、エチゴ、ムツの3柱にミウラを足して、四大巨頭と呼ばれだしたッ。(←NEW!)


 なお、ムサシのヌシは中立と言うか議長というか博士の立場らしいッ!


『え? なんで?』

 ミウラは素で驚いている。


『驚いたのはこちらだ。先ほどムツのヌシの強力だけど恥ずかしい光線を簡単に弾き返したではないか』

 珍しく長台詞のオワリである。


『私とオワリのヌシの2柱と相まみえて生きているヌシは、ミウラのヌシとイオタのヌシだけだぞ』

 エチゴも、今更何を、といった顔をしている。


『気づいておらぬ方がおかしいだろう。それに以前会ったときよりもさらに強くなっている。どうだ、オワリのヌシ?』

『うむ!』

 エチゴの問いかけに頷くオワリ。


『内包した力が見て取れる』

 オワリのヌシの目がクワワっと見開かれたものだから、イオタとミウラは震え上がった。


『確かに強くなったのう。おほおほおほ……何をしておったんじゃ?』

「えーっと……」

『そうですね……』

 イオタとミウラは、ムサシの問いかけに、答えることができないでいる。


【何かやってたっけ?】

 イオタよりの直通念話である。


【特に何も、温泉入って、食っちゃ寝して、セッセッセッしてただけですが】

 2人とも小首をかしげて考えている。


【食っちゃ寝はヌシらしからぬ行為にござるから、外してよかろう】

【温泉にござるかな?】

【高頻度で湯あたりしておいて、パワーアップもあったものではありませんな】

【となると? 残るは?】

【まさかの? 残りで?】


 残りはアレである。ヒント=「2人で1柱のヌシである」。


 イオタは苦虫を噛みつぶしたような渋い顔をして、うんうん唸りながら考えているそぶりをする。だって、顔が赤くなっていくのを誤魔化すにはこうするほか思いつかなかったからだ。

 一方、ミウラは「地熱ですかね?」「あそこは南海トラフがアレしてアレですから」などと考えるフリをしながら目を左右に泳がせている。


『ちなみに、チビッコ! お前、なんかできるのか?』

 ここへ助け船をこぎ出したのは、人生経験が浅いムツのヌシであった。


「某にござるか!」

 助かったとばかりにこぎ出された船のオールにしがみつくイオタさん。


『でっかくなるとか?』

 ムツは手を上下させている。


「うーむ、顕現した直後に頑張ってみたのでござるがな……今ならやれそうな気がする。ふんす!」

 ほっぺたを膨らまし、気合いを入れるイオタさん――。全く変化がなかった。


『逆に小さくなるとか?』

 ムツが掌を押し下げた。


「小さくとな? ふんーす!」

 ものは試しと、イオタさんは自分が小さくなるイメージを頭に描いて、気合いを込めた。


 すとん!


 音を立ててイオタさんの背が縮んだ!


 小さな体。細い手足。クリクリした目。おっきな耳。

 ちっちゃな刀を腰に差した、ちっちゃなおちゃむらいちゃんのネコミミ美幼女。

 3歳児イオタさん、爆誕!


『『ぐはっ!』』

 これにダメージを受けたのがミウラ! ……とムツ。


 特にムツ。何でムツ? 宙に浮いていたのだが、墜落した。2度3度とバウンドして動かなくなった。


「どういう事にござるか……はっ!」

 イオタさんに思い当たるフシ有り!


 ミウラだ! ミウラは小さくなれる。存在を同一とするイオタさんにできない理由はない。


「なんでござるかな? 某が小さくなる事に意味がござるかな?」

 細くて短い手足をブンブン振り回してプンプン丸のイオタちゃん。


『アレです。特殊性癖の方々は確実に初撃を喰らいます。これは強い! 強い性能だ!』

 ミウラは、ダメージが入ったのか、腰砕けになりながら解説していた。


「しゃらくせぇ!」

 ポンと音を立て、イオタは元の姿に戻った。いつものネコミミ美少女お侍さんだ。


『話、もといして良いかな?』

 手持ちぶたさにしていたムサシが、割って入ってきた。話が前向いて進まないのだ。


 ちなみに、オワリは馬鹿にしきった冷たい目でそれぞれを睥睨していた。


「ご随意に」

 イオタはご機嫌な斜めだ。


『さて、これより以後の時代、人に対してヌシはどうあるべきかを話し合おうという話じゃったな』

『それについては我から話そう』

 冷たい目のままのオワリである。


『この大地の活動は収まりを見せた。ならば自然な姿に戻るべき』

 いや、それじゃ解らんって!


『オワリのヌシが言いたいのはじゃな、フジのお山が火を噴く前の状態。つまり人の世は人の手に任せよう、ヌシによる人社会への介入を止めよう、という事じゃ。幸い、徳川という統一政権ができた。日本から戦が消えた――』


 イオタが言うところの「サムライ」が「侍」になった。そう言うことだ。侍という力を持った為政者が、効率よく政治を回す、司る。まだまだ欠点の多い政局運営であるが、とにかく一歩を踏み出したのだ。


『――四大巨頭のヌシが歩調を合わせ指標を示せば、他の国のヌシ達も合わせやすくなるじゃろう』

 ムサシが補足した。


『その提案を私たちが受け入れれば、の話だ。私は受けるとは言ってない』

 エチゴが眼光鋭くオワリを睨み付けた。


『不服か?』

『否! もとより承知するつもりだ。ただ、オワリの口から先に出たことが嫌なだけで』

『ああん?』

 オワリのヌシは、ヤクザの恫喝っぽい口調で対応した。お互い、メンチを切り合っていて一向に引く様子がない。


 それを人ごとのように見守るイオタとミウラ。


「直接対決しておらぬかなのう。あの二柱」

『イニシアティブの取り合いですか。エチゴのヌシは、とりあえず賛成したからヨシとして放っぽときましょう。これで賛成票が2つ入りました。わたしも条件付きで賛成ですのでこれで3票。ムツのヌシは……』


 ムツのヌシ様は墜落したまま動く気配がない。


『とりま、賛成多数により本法案は可決と致します。如何ですかムサシのヌシ様?』

『おほおほおほ! 助かったよミウラのヌシ。ところで、ミウラのヌシの条件とは何じゃね?』

 老獪なヌシは、詰を見逃さない。


『条件というか、注意事項です。パッと思いついた……』

 重たい視線を感じたミウラは、頭を上げた。

 いつの間にかオワリとエチゴが闘気を出したまま、傾聴していたのだ。


『……あ、え、コホン! 平和になったことで、これまで戦用に使われていた技術が、平和利用へと向かうでしょう。技術の向上です。これは日本だけでなく西洋諸国も同等です。見た目は違えども中身は同じ人種なのですから』

『その程度、解っておるわ! 結論を先に話せ!』

 相変わらず短気なオワリである。


『今より、たった200年後、300年後のお話です』

 ミウラは「たった」という(ワード)でヌシ的に間近であると強調した。


『皆様方ご存じのように、徳川家の主力兵器でもある銃が、今後飛躍的に発達するでしょう』

 ミウラは「ご存じのように」と表現することで、共通の常識であるとミスリードさせる。俺知らないよ、は許される空気でなくなった。


『近いうちに、人は、ナリソコナイ程度なら確実に1人で狩れる獲物と化するでしょう。とうぜん大砲も発達します。城壁を壊すどころか、町一つを吹き飛ばす威力を持つに至るでしょう。そんな武器を積んだ戦船を何百隻と揃えるでしょう。陸上においても、自走式の大砲がそれこそ何千輛も一団となって戦場を駆けることでしょう』


 必要な説明部分なのだが、オワリのイライラが止まらない。だから怖い!

『つまり、人は遠からずヌシに対抗できるまでの戦う力を手に入れると結論づける次第にございます』

『ミウラのヌシよ――』

『よってッ!』

 イライラを殺意にまで高めたオワリの言葉を遮る。殺されそうだがら。


『遠くない未来において、ヌシによる人社会への再干渉の必要を含めおいていただきたい! 以上です!』

『当然だ』

 即答したオワリ以外のヌシ達は、ミウラの話をよく噛んで消化していた。


『よー解った』

 ムサシが皆を代表して話を受け取った。


『ミウラのヌシが予言した時が近づいたら、また話し合おう。必ずじゃ。良いな!』

 四者四様に頷くことをもって了解とした。


『ミウラのヌシよ、それまで準備しておかねばならぬ事はあるかのう?』

『そうですね……』

 ミウラは、思いつく事をいくつか提案した。


 四巨頭の会合はお開きとなった。……途中から寝転がったままのムツのヌシをそっとしておいて。

 

 

 

 

 そして、数百年の時が穏やかに流れていく……。

 

 

 

次回でセンゴク時代編最終回となります。


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