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噴火

 ミウラが、地球の地下の状態と、造山活動、南海トラフに関しての知識を喋った。マントル流も。コアも。

 地球が丸いことや、その証明までもベラベラ一気呵成に喋った。


『とうわけで、地球が平らだったら果てしなく彼方まで見通せるはずです。しかし現実は水平線に遮られています。よって、地球が丸いということになります。以上証明を終わります』


 ハァハァと口で息をするミウラ。

 ぐうの音も出ず、涙目になるムサシのヌシ。

 ちょっといたたまれなくなったイオタ。


 ……。

「はい! それでは一旦仕切り直します!」

 イオタがその場を仕切りだした。


「ではこれより、ムサシのヌシ様から、地下の大いなる力とヌシとの関係を説明していただきます。我らはそこの所を一切掴んでおりません。素人にも解るように詳しく説明の方をお願いいたす。どうぞ!」

 どうぞと言いつつ、折檻の目でミウラを睨み付けておく。


『コホン!』

 ムサシのヌシ様が気を取り直した。


『単刀直入に言うとじゃな、我らヌシは大地の不思議な力が作りだしたモノ。生物であり生物でなし、モノでありモノでなく。母の腹から生まれぬモノ。いや、ミウラの言う地球とい大地が母なのじゃろうな。地球というモノが生み出した子が儂らヌシじゃ』

「だから、いきなり顕現という現象で生まれるのでござるな? その時から完全な意識と知恵を持って出現する存在がヌシでござるか?』


――自分たちはちょっと違うが――


『地球の内部、マントルだの何だの、熱や物質以外の不思議エネルギーが、あるいはそれらを含んだ不思議エネルギーが超生命体にして完全生物ヌシを生誕させる(地球の意識体の分身がヌシだったらどうしよう? いや、どうもしないけど)』

「大地の神(イザナミ様)が生んだ神がヌシでござるかな?(全能感が全く感じられぬが神だったらどうしよう? いや、どうもしないけど)」

 イオタとミウラ、それぞれが自分の言葉で理解した。


『10年前の……、12年前になるのかの? ミウラの顕現と、それに続くイオタの顕現。二柱で一柱といった特殊な方法による顕現。ならびに、昨今のヌシによる乱暴狼藉、いわゆるヌシの気が荒くなった、ヌシ同士が争いだしたという謎についてじゃが……』

 知りたいのはそこ!


『……地下より湧き出る力が過剰気味になっていると言うことに全てが機縁する!』

「『……』」

 だいたい、ミウラの仮説道理の答え。ミウラの推測が補強された。そこまでは知ってる。と言いたいのだが、ここはぐっと堪えた。


『過剰気味になっていると言うことはじゃな、つまり――』

『つまり?』

 知りたいのはそこ! その先!


『大規模な地の力が地表面に接近しておる。ヌシの生死に影響を及ぼすぐらいのな。このままなら……』

「『このままなら?』」

『大地震が起こるか、あるいは……』

「『あるいは?』」

『大きな山が噴火する!』

 ムサシが言うや否や、大地が激しく揺れた。上下運動だ!


 ドーン!


 太鼓を打ち鳴らすような腹に響く音がした。

 音の方向に振り向くと……


「フジのお山が噴火でござる?!」

『大規模な割れ目噴火ですね』

 遠く――フジのお山の山腹から白い煙が天に向かって噴き上がっている。

 横っ腹をかっ捌いたような噴火だ。

 

『ほーら!』

「ほーらじゃないでござる! これは一大事にござる!」

『避難誘導! 溶岩が! 灰が降る! 冷害!』

 ネコ2匹が狼狽えている。


『おお、噴火じゃな! 千年前の方が大きかったし派手じゃったぞ!』

 2人をよそに、ムサシは落ち着いたものだ。


「なにを落ち着いてござるか!」

『落ち着いている場合ですか! 防災対策! 避難住居、水の確保! すぐに動かないと!』 

『何をそんなに狼狽えておる? 噴火じゃろ? これでヌシ達に影響を与えていた余剰の力が抜けた。元の穏和な世が来るんじゃよ?』


「いや、でも! 人がでござるな!」

『人間の生活がガタガタになりますよ! 吹き上がった灰が積もった田畑は長い年月使い物になりませんし、成層圏に上がった灰が日照時間をなんだかんだで冷害が来る! 大飢饉時代の到来です!』

『そなんに大飢饉時代が怖いか? ミウラのヌシよ、イオタちゃんよ?』

 ムサシが何を言ってるのか、2匹のネコには理解できなかった。


『儂らヌシが、なんで人の世を憂いる必要があるのじゃ?』

「『え?』」

 ムサシの言葉に驚くイオタとミウラ。


『儂ら、人の保護者か? 支配者か? 無関係者であろう?』

「まあ……」

『そういやそうですね』

 ストンと落ちるモノが落ちるところへ落ちたのか、イオタとミウラは落ち着いた。


 ここが以前の、イセカイや現世のイオタとミウラと比べて違っているところ。人に対して冷たい。

 魂が廉価コピーされたからか、はたまた、サムライの非道な仕打ちを見たからか。いまは温和しい村人も、一皮剥けばサムライと同じ。サムライ予備軍であるからか。


『第一じゃのう、おヌシらに何ができる? ヌシといえど、さすがに噴火は止められぬ。空へ舞い上がった灰とやらをどうにかできるか? できまい? ミウラのヌシが言うからには冷害が来るのじゃろうが、だからどうする? おヌシの能力で米が出せるか? 家が建つか?』

『ははぁ、全部無理でございますね』

 イオタも天を見上げなにやら考えている。


『人もヌシも死ぬときゃ死ぬ。自然とヌシの摂理にはかなわぬ。それでも……』

 ムサシは、悪戯っぽく笑った。


『人ではなくヌシとして。おヌシらはできることをやろうとする。――のじゃろう?』

 

 

 


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