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シュシュットニンジャジーャン

 ハコネでのドッタンバッタン大騒ぎ、初めましてェ君をもっと斬りたいのも終わり、イオタとミウラはイズに帰っていた。設定上の「本宅」でくつろいでいる。

 ミウラは室内仕様のベンガル虎サイズ。イオタさんは浅黄色の着流し姿でミウラのお腹にもたれて座っている。もふもふ。


『なぜ煙が時間停止の引き金になるか、結局仕組みが解らなかったのですが……』

 イオタとミウラの会話である。いや、ミウラの一方的な説明である。声は子供な大人の方。


『分子活動が停止したのではなく、フィールド、えーっと極々薄い膜状の結界が張られ、その中が空間的に時間停止されているのです』

 イオタは理解するのを諦めた。


『あの白銀の輝きは結界が外界の全ての波動と粒子を受け付けなくしていたため、光その他を反射していたのです。白銀の色ではなく鏡の反射だったんですね。そこに気づいたわたしは天才です。褒めてください』

「よしよし、ポンポンしてやろうなポンポン」

 ミウラの尻尾の付け根をポンポン叩くイオタ。


『あっ! あっ! そこいい! 入った! 入りましたよ! あっ!』 

「む、そろそろではないかミウラのヌシ様」

 イオタは笑って立ち上がる。


『ちっ! これからだというのに。無粋な! これだから人間はァ!』

 ミウラは庭に飛び出し、元の姿に戻った。日を浴びて見上げる巨体。

 イオタは部屋で腰かけたまま、腕を組み、眼差しは未来を見つめ、頭頂に飛び出した右のネコ耳を右に傾ける。

 したしたしたたたたた。精一杯消したであろうはずの足音を拾い上げる。


「失礼つかまつる!」

 しゅたっ!

 サスケが前方宙返りで参上した。……この方が忍者っぽいと、イオタが注文を出したのだ。お陰で、毎回手の込んだ登場方法を考えねばならず、ヤマシの村の者は頭を捻っている。


 ――体術に優れた者だけが目通りできると誤解されねば良いが――、もう誤解されているが――


 ハコネでヤマシの村人と交流を持ったあの件のすぐ後。イオタとミウラの強い希望により村人の運動能力を見せてもらうことになった。

 競い合うように技を披露する村人達。そりゃ、今後がかかってるものね。

 バク宙は基本。ねじり宙返りや50連バク転なんかも飛び出した。

 一連の競技にウケけたのがネコ2匹。お庭番だとかサジタリウス組だとか訳の解らぬ単語を連発し、大いに盛り上がる。

 これにサスケ達は手応えを感じ、さらなる妙技と連携技をみせる。なんでもサスケとサイゾウが15歳の時編み出した術らしい。どんな世界でも15歳(満年齢で14歳)の時にハジケるのは男子の性のようだ。


 イオタは部屋から顔を出し、濡れ縁に腰掛ける。その際一工夫入れた。

 浅黄色の着流し姿だったのだが、変身の能力を使い、小豆色の細袖に濃紺の袴姿に変化させた。そしてこれ見よがしに突き出した手に刀を出現させ、緩く腰にさした。(普通、座る際に刀は腰にささない)

 サスケは、目の前で見せられたヌシの神通力に、あらためて怯える事となった。


「サスケか? カイの国の首尾はいかが?」

「はっ! 金の匂いがプンプン致します。金鉱を見つけ出すのも時間の問題かと。あと、銅や銀の鉱脈も確実です。カイの山は、まさに宝の山。ミウラのヌシ様のご慧眼、恐れ入りましてございます!」


 サスケは片膝を立て、片膝を地面に付け、右手を前に突き、左手を後ろに回すというニンジャスタイルで報告している。ミウラたっての希望である。イオタはこれをヌシの前で報告する際の正式な礼儀だと教え込んだ。心の中で謝っておいたから終わった問題だ。


「金にも匂いがあるんでござるかな?」

「いえ、花のように香りが漂ってるわけではなく、こう……、何と申しますか、長年の経験と申しますか……えーっと」

 手を巻き巻きして言いたいことを表現しようとしている。上手く表現できないようだ。あと、語彙力。


『金を含む地層とは、特徴的な模様や色をしているのだろう? 地模様だとか、必ず金と一緒に取れる鉱物を見つけたとか』

 ミウラが助け船を出した。


「そうそれです! さすがミウラのヌシ様、よくご存じで!」

『フッ、サスケよ、おだてても何も出ぬぞ!』

 ミウラの知識は聞きかじりである。生前、サングラスの大御所が地層を調べるという人気番組をよく見ていたおかげだ。


「ならば、カイの国のサムライ共は?」

「ははっ! 当面は我らヤマシのムラの者達の意のままでございます。各地のサムライ共の内情も筒抜けとなる手はずは順調!」


 金や銀、銅など貴金属を産出する国は富める。その富を生み出すのがヤマシの村人。そこを上手いこと持って行き、サムライ共の中枢に入り込む。

 これはサムライ共を毛嫌いしているヤマシの者にとっても意趣返しができる! と大いに乗り気だった。


「重々至極。サスケよ、各国への手配りは如何でござるかな?」

「はっ! ははぁーっ!」

 サスケは、イオタに続き、ミウラにまで自分の名前を覚えてもらえていた事に、密かに感動していた。


「ご依頼通り、中国地方、四国、九州、ヤマトとキイ方面、に人の手配を致しました。ヌシのおっしゃるイジンとテツポウとやらも平行して調査いたします。東の地は先日、仲間が出発いたしました。あ奴らは、受けた恩を忘れませぬ。やる気満々にございます! 各地のサムライ共は自領で金銀銅がとれるかも、となれば、逆に我らに取り入ってくるでしょう。ご期待ください!」


「頼もしいぞ、サスケよ。期待しておるでござるよ」

「ありがたきしあわせ!」

 サスケはまた平伏した。なんか見てて凄く幸せそう。


「お恐れながらイオタのヌシ様。一つ教えていただきたいことが……」

「む? 某が教えることなど……、何でござるかな?」

 教えて欲しいと請われ、ちょっと嬉しそうなイオタさんである。


「先だって、失礼を致しました際のお話です。畏れ多くも我ら5人で飛びかかった際、イオタのヌシ様に弾かれました。5人の剣を同時に。如何様な太刀筋でありましたか、手前の曇った目には全く見えず。イオタのヌシ様の王者の風格を持った剣圧の前に身動きとれず、稲妻のよう剣筋も見えず、神剣、もとい魔剣3本を叩き返し、ナマクラ2本を押し切る技。あの経験が、頭から離れません!」


 サスケは己が震える掌を見つめ、無理矢理拳を作る。


「あれか? 人は真似できぬでござろうな。ヌシ独特の技でござるからな」

 イオタさん、褒められてお鼻がちょっぴり高いようです。


「なるほど! 覇道のごとし剣。稲妻のごとし速さ。3本の刀を押し返す技。まさに! これが噂の秘剣、『覇道剣稲妻三段返し』でございますか!」

「何でござるかなその恥ずかしい技名は? それは違うでござるよ。どこの界隈の噂話でござるかな? あれ? これって前世イセカイでも有ったような?」

「覇道剣稲妻三段返し! しかと心に留め置きます!」

「これ! 人の話を聞け! ミウラよ、おヌシも何とか言え」

『はっはっはっ! サスケよ ハナとの間に赤子(ややこ)ままだかな? 目出度い事があれば教えてくれ。せめて祝いの言葉を贈りたい』

「もったいないお言葉にございます!」

 サスケはまたもや感激した。ミウラ評価が鰻登りだ。


「ちょっと! ミウラ! ちょっと!」

『サイゾウや村長にもミウラが期待していると伝えてくれ。ご苦労だった。下がってよい』

「ははッ!」

 サスケはシュバッとバク転。シュシュッと走り去っていった。腕は動かさず、やや後方へ垂れるスタイルで。


 ミウラが言うに、この一連の動作が、ヌシに対するニンジャの正式な礼儀作法らしい。礼儀作法家が作った作法なんだから、これはもう仕方ないことだ。


「その恥ずかしい技名を広げたら斬りに行くでござるよー!」

 サスケの足音が聞こえなくなった頃……。


「上手くいったでござるな。一部は失敗にござるが」

『予想以上の出来ですね。まさか、ヤマシ、つまり山師の里だったとは。まるきり忍者じゃないですか』

 ミウラは普段の声に戻している。


「ミウラが白銀化を解いたことが、絶対の信頼を勝ち得た最大の原因にござるよ」

『ですね。村人が石化、白銀化されていたのを見たときはびっくりしましたよ』

「うむ、酷い話にござる。現地での打ち合わせでは、ハコネのヌシが白銀化を元に戻せない事を暴いて、被害家族の敵を討ち、信頼を得よう、という筋書きでござったが……まさかね」

『まさか、ああも上手く解除できるとは想定外でした』

「これで某らは自在に動かせる駒を得た事になった。知りたいことを指定して調べさせる。これは大きいでござるよ」

『サブロウさんは商人の目で。サスケ達は忍者の目で。全く違う二つの目で世界を見ることができます。より情報の精度が上がると期待されます』

「よきかなよきかな。今回はミウラが大活躍にござったな」


 イオタは、刀を消し、浅黄色の着流しに着替(変化)えて部屋へ入った。


『いやー、それにしても、慣れないことをすると肩が凝りますね。わたしってば普段から猫背なんですから、肩もなんですが、腰が凝って凝って大変です』

 ミウラも虎サイズにまで小さくなり、イオタの後について部屋へ上がった。


「ならば褒美をくれてやろう、そこに寝るがよい。腰を揉んでしんぜよう」  

『や、やさしくしてね』

 うつぶせに寝ころぶミウラ。


「某が上になろう」

 イオタは着物の尻を端折り、トラジマ模様に跨った。


『うっ! イオタさんの重みと体温で! 接触部はおパンちゅの薄い布一枚! うっ!』

「ここに当てがって、それ!」

『ああっ! いきなり入っちゃった!  ツボに』

「それそれ、ズブズブ入っていくぞ!  毛皮に指が」


『あっ! あっ! いいっ! そんな激しくっ! 揉みしだかないで!  凝ってるところを』

「激しい方が良いのでござるよ。泣き言は聞かぬ! オラオラッ!」


『下になってるから、抵抗できないぃ!』

「こうやって足を持って、そらそら! たまには某が上になるのも新鮮でよいのな!」


 イオタさんのネコ式マッサージは大変効果的だった。

 


 こうして、夜は更けていくのであった。

 

 

 

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