#8
翌日の放課後、エイクは昨日の女の子を同じ場所に呼び出していた。三人がやってきて、その中の一人、エイクに手紙を渡した子が彼の前に、緊張で足を震わせながらやってきた。赤面して震える彼女に、エイクは優しく話し掛けた。
「昨日はお手紙ありがとう。読ませてもらったよ」
「あ・・・・・・ありがとう・・・・・・。あの・・・・・・わ、私・・・・・・エイク君がす・・・・・・好きなんです。わた、私と付き合って下さい!」
女の子は震える声で、でも彼への想いを絞り出すように、エイクに告白した。
「ワタシの事を好きになってくれて、ありがとう。・・・・・・でも、ワタシには好きな人がいるんだ。だから、君の気持ちに応える事は出来ない。・・・・・・ごめん」
エイクから断られた女の子は目から大粒の涙がぼろぼろと零れ落ちる。
「エイク君・・・・・・気持ち、教えてくれてありがとう・・・・・・」
女の子は顔を押さえ、見守っていた友人達の元へ行った。そして三人で泣く姿を背に、エイクはその場を去っていった。
それからまた、エイクにとってはもどかしい日常が繰り返される。
『毎日どこかで偶然会えることを期待していた』
講義中でも西小路の事が頭を支配して、授業に集中できない。西小路の側にはいつも紅葉の影がチラつく。時々、西小路を見かけても、やっぱり紅葉がいる。
『きっと彼には彼女がお似合いなんだ・・・・・・忘れなきゃ。忘れよう。でも・・・・・・気が付くと君のことばかり考えてしまっている』
あの日、西小路に助けられた日のこと。あんな姿でいても気持ち悪がらずにいてくれたこと。自由に動けない自分の肩を支えて守ってくれたこと。優しく、でも力強く自分に手を差し伸べてくれたこと。そして彼に抱き着いて、燃え盛る建物から一緒に脱出したこと。
『もう一度・・・・・・彼の胸に・・・・・・』