#7
大学寮の自室に帰宅したエイクはベッドで紅葉の肖像画を自身のSNSで見ていた。真珠のようにスベスベとした綺麗な紅葉の肌・・・・・・西小路の隣が似合う女性・・・・・・。エイクの胸の中ではモヤモヤとした嫉妬の感情が湧いていた。
ふと思い立ったように、エイクは立ち上がり、洗面所の棚を開く。そして中からシェービングジェルとT字剃刀、脱毛用ワックスを出した。
シャワールームに入り、腕や足の毛を剃刀でツルツルになるまで繰り返し剃っていく。胸毛にはワックスを塗り、固まるまで待つ。
「そろそろ良いかな・・・・・・・・・はっ‼」
固まったワックスを一気に引き剥す。脱毛時の痛みで悶絶するエイク。
「~~~っ‼」
―――その後、シャワーを浴びて汗と毛を流して、さっぱりしたエイクは、どこか吹っ切れた表情をしていた。
そして、彼は机に向かって手紙を書き始める。勿論、宛先は西小路宛てだ。
『親愛なる西小路ダンテさまへ―――』
自分の彼への思いを文字に託して綴っていく。初めて出会った時の事、西小路に助けて貰った時の事。そして日々を過ごしていく中で自分にとって、西小路の存在がどんどん大きくなっている事。
『―――ワタシにとって西小路君は・・・・・・』
手紙の完成までもう少しといったところで、エイクのスマホが鳴り、チャットアプリの通知が届く。エイクはもしかしたら西小路からかもしれないと思い、表情がパッと明るくなる。しかし、相手は同じゼミの女の子からだった。
次の日の夕方、キャンパス内に呼び出されたエイク。待ち合わせ場所には昨日チャットをくれた女の子が立っていた。そこから少し離れた所に、彼女を見守っているのだろう、彼女の友人と思われる女性が二人。
「エ、エイク君・・・・・・急に呼び出しちゃって、ご、ごめんね・・・・・・」
女の子は顔を真っ赤にして、それを隠すかのように俯き気味だった。モジモジとしながら上目遣いで、エイクに恥ずかしそうにチラチラと幾度も視線を送る。
「ううん、構わないよ。今日はどうし―――」
「あ、あのっ! ここ、これ受け取って下さい‼」
女の子は勇気を振り絞って、エイクに一通の手紙を両手で差し出した。その手は緊張で震えている。
「・・・・・・えっ。あっ・・・・・・うん。ありがとう」
一瞬、何が起きたのか思考が停止したが、状況を理解して、女の子から手紙を受け取る。
「お返事待ってます!」
エイクが手紙を受け取るやいなや、女の子は走って行ってしまった。女の子とそれを追いかける友人達の背中を、エイクはぼうっと眺めていた。