#5
エイクはベッドから起き上がり、本屋に向かった。そして古代和字総覧の本を探し、本を手に取った。
「西小路君・・・・・・いるかなぁ」
エイクは本屋のあと、図書館に足を運んだ。先日彼と会った席に向かうが、今日はそこに西小路はいなかった。でも、もしかしたら彼に会えるかもしれない、そう思った。エイクは西小路に会えたら、本を渡したいと思い、隣接するアロハカフェで待つ事にした。
エイクは外が見える席に座り、アイスコーヒーを注文した。席に届けられたドリンクを飲みながら、外を眺めるエイク。
ふいに、ドアベルが鳴り、入口の方に目をやると、かやのが店に入ってきた。もしかしたら西小路も一緒かもしれないと期待したが、かやのは一人でカウンター席に座った為、エイクは肩を落とす。かやのが店長から話し掛けられていた。
「かやのさん、怪我の具合はどう?」
「ん~、もうちょっとで治りそうだなぁ」
「あら、そうなの? 良かったわね! そういえば、貴女に話したい事があるんだけど」
店長がかやのの注文した料理のセットドリンクと一緒に、一枚のチラシを彼女の前に置く。そこにはみのおモールの広場で定期的に開催されているマルシェの事が書かれていた。
「かやのさんさえ良かったら、これに参加してみない? 正直あなたの料理への姿勢も、技術も目を見張るものがあるわ。設備もキッチンカーのレンタルとかもあるし―――」
かやのは話の途中でテーブルに置かれた料理を頬張りながら、店長の話を興味津々で聞いていた。話が終わり、「どうかしら?」と聞かれたかやのは、
「やるやるーーー‼」
と、元気よく答えた。
「フフッ、決まりね。私の方から代わりに申し込んでおくから、早く怪我治しとくのよ?」
ホクホク顔のかやのは勘定を済まそうと席を立つと、店内でずっと誰かを待っているようなエイクの姿が目に入った。エイクのドリンクグラスは空になっており、気になったかやのは彼に声を掛けた。
「よぉ、エイク。誰か待ってんのか? もうすぐ店閉まるぞ」