#10(完)
日が暮れて辺りがだいぶ暗くなってきた。そろそろ帰ろうかという時、紅葉の目の前に、ぽうっと淡い緑の光がふわりと一つ横切った。
「あっ・・・・・・蛍」
「おぉ、そういえばそろそろ蛍の時期でゴザったな」
「山道がライトアップされるから、みんなで見に行きましょう! かやのさ・・・・・・」
毛玉団子になっているかやのに桃音が声を掛けようとすると、
「いまは邪魔しないであげよう?」
西小路は口に人差し指を当て桃音にそっと言った。桃音も「そうですね」と笑顔で頷く。
「わぁ・・・・・・すごい・・・・・・」
山道に降りてきた四人は、ポツポツと光り始めた蛍の光が目に入る。小川のせせらぎの中、大滝のマイナスイオンが漂い、無数の蛍の光が舞う。まるで幻想的な光景に、紅葉と桃音が溜め息混じりで、うっとりと見惚れて感動していた。
かやのも動物達に囲まれ、西小路達も箕面川のゲンジボタル達と共に、清流が醸す風流な時間を楽しんだ。
後日、幸隆がかやのに会いに外国語学部のキャンパスに来ていた。
「やぁ、かやのさん。突然すまないでゴザル」
「お? 幸隆じゃねーか。俺に何か用か?」
幸隆は先日の大滝で自分がかやのに対して感じた事を伝えた。
「―――それで、かやのさんに次世代アニーゴ開発チームの一員になってほしいナリ」
かやのはそれなら交換条件として、『動物言語の証明』についての論文の協力を持ち掛けた。それに対して幸隆は、
「拙者で良ければ『何でも』協力させてもらうでゴザルよ!」
と、胸をドンと叩き、交換条件を飲んだ。
「よっしゃ! じゃあこれからヨロシクな、幸隆!」
「拙者こそ、宜しく頼むでゴザル!」
幸隆がかやのにビシィッと敬礼をする。ここに強力なタッグが成立した。強い味方が出来て安堵の笑みを浮かべる幸隆と、ニカッと満面の笑顔のかやの。
自分がかやのに言った『何でも』という言葉の重さの意味を、この時の幸隆はまだ知る由も無かった。
第九話『癒しのオフトゥンは、6月の山にあったのか。』完
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次回、第十話『ゴールドバニー』
お楽しみください。