#9
口の中で薬草をモゴモゴさせながら、かやのは猿達に手を引かれて後をついていく。その後ろを西小路達もついていく。森の中に入って少し歩いていくと、森の至るところから小動物がかやのの周りに集まってくる。そして、動物達がかやのに木の実や薬草、川から汲んだ水を持ってきた。
「ハハハハハ! お前ら、ありがとな!」
貰った物を片っ端から食べていくかやの。そしてくしゃっとした笑顔でそこにいた動物達に、それぞれの鳴き声でお礼を伝えながら、みんな平等に撫でている。
「すごい・・・・・・本当に動物と会話しているみたいでゴザル・・・・・・」
「本当に会話していますわ。かやのさんなら」
まるでファンタジーの世界に迷い込んだかのような光景を、息を飲んで見入っていた幸隆。幸隆も紅葉の言葉に、科学抜きで「確かに」と頷いていた。
気が付けばかやのは沢山のモフモフに囲まれて、とても暖かそうな毛玉団子状態になっていた。首だけ出して、「んあぁぁぁぁぁ」と満面の笑顔でモフモフを堪能していた。そしてやっぱり頭には鳩が乗っている。
後ろから見るかやのの横顔は、動物を愛でる美女という風に、紅葉達の目に映り感嘆の声を漏らす。ただ一人を除いては・・・・・・。
「うーん・・・・・・これが本当の天然羽毛布団というやつか」
西小路の目には堕天使ゼクスが動物に囲まれて、豪快に笑っている姿に映っていた。