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リアドラ ーReturn to the Draftー  作者: Tsuyoshi&松山亮太
第九話『癒しのオフトゥンは、6月の山にあったのか。』
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#7

 最終的に野生動物を見に行こうという事になり、西小路達は箕面大滝の滝ノ道に来ていた。結局、ペットショップでの動物救出作戦に失敗したかやのは目をウルウルさせながら、しょんぼりと歩いている。その後ろを西小路、紅葉と石丸、桃音、幸隆が続く。


「かやのさん、元気ないですね・・・・・・モネがペットショップなんかに誘ったから・・・・・・」

「そんなに落ち込まないで下さい、桃音さん。あれは仕方がないですわ」

「かやのちゃん・・・・・・」


 その一行の姿を野生の猿などの動物達が見守るように、森の茂みから覗いていた。


「ハァ・・・・・・あの頃はなんだかんだ良かったなぁ・・・・・・」

 

 げんなりしながら、かやのが独り言をボソッと呟いた。



『妖精が舞い、歌と光が溢れる幻想的な光景が広がる天界。その天界の森の奥深くで、六枚の翼を持つ天使ゼクスが神獣達と(たわむ)れていた。彼は自身が所属している『戦天使』としての任務に就いている時と、そもそもの『天使』としての業務をこなしている時以外は、こうして天界の生き物と触れ合っているのだ。

 それは堕天使になり、魔界に転居しても変わらなかった。業務中以外は魔界の魔獣達と触れ合い、共に過ごしていた。良くも悪くも自分の感情に素直な彼にとっては、裏表のある天使や悪魔達との交流は面倒でしかなく、交流も少なかった。その代わりに神獣や魔獣、動物や虫などと過ごす時間が多かった。』



 かやのが昔の事を思い出していると、後ろの幸隆からストップの声が掛けられた。箕面公園昆虫館の前に到着していた。


「かやのさん。ここでは箕面市に生息する昆虫達がたくさん見れるけど、どうナリか?」


 かやのはその声にふと我に返る。


「虫? ここには虫がいっぱいいるのか?」


 かやのの目に再び光が灯る。


「ちっちゃい頃、パパとママとお兄ちゃんとここに行って、モネ怖くて大泣きした事があったなぁ」

「その時は桃音が泣き止むまで大変だったでゴザルよ~」

「そこまでは覚えてませ~ん」


 (きょう)(だい)の仲の良いじゃれ合いの横で、かやのはワクワクしていた。そんなかやのの後ろで、西小路は昆虫と聞き、


「な、中に入るなら、僕はここで待ってるよ」


 と、すこし顔を青くしながら館外のベンチに座る。


「では、私もご一緒しますわ。石丸さんを連れては入れませんし」


 紅葉も石丸を抱いて、西小路の隣に座る。


「虫がいっぱいいるんだな‼ よし、じゃあ行くぞ!」


 かやのは嬉しそうに中に入り、幸隆はかやのと虫の魅力を共有出来ると喜び、彼女の後に続く。桃音は西小路と紅葉の方を見て、本当はまだ虫は苦手だが気を利かせて入館する。

 館内では箕面に生息する昆虫の写真や標本が飾られていた。幸隆は昆虫の標本をかやのと桃音に紹介するように、得意気に説明し始めるが、桃音はやっぱりまだ少し苦手なようで、かやのにしがみついていた。

 そして一方のかやのはというと・・・・・・ただただ無言で号泣していた。歓喜の涙ではない。

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