#5
「さて、次はコイツだ。この犬はイギリス生まれでな。普段はイギリス英語で話しているようなもんだ。そこに時々自分の知っている日本語を混ぜて話している感じだな」
今度は犬にも猫の時と同じように目線を下げて、犬の鳴き声で話しかけている。そして再び、同じワードを鳴いてもらった。当然、結果は火を見るよりも明らかだった。
「どうだ、俺の言った通りだろ? つまりそれは、『日本語』の『標準語』でしか対応出来てねぇってこった。だから、標準語じゃねぇ方言や言語では、解析不能って表示が出たり、そもそも違うワードが出てくんのさ」
「そんな・・・・・・いや、でもまさか・・・・・・いやいや、そんな馬鹿な」
そう締めくくったあと、かやのは二匹の協力者達にそれぞれの言葉でお礼を伝える。その横で幸隆は理解できないという顔で頭を掻いている。
「かやのさん凄いですわ‼」
「動物の言葉が分かるなんてステキです‼」
二匹から顔を舐め回されているかやのに、紅葉と桃音が称賛の拍手を送る。
「・・・・・・仮に、かやのさんの言う事が本当だとしても、それを実証する為には途方もない動物の種類や音声データが必要になってくるナリ。それにそもそも、現状では動物の出身地は把握できても、言語の違いや訛りの有無までは人間には不可能でゴザル」
幸隆は先ほどの実験を目の当たりにしても、未だにかやのの言う事が信じられないようだった。幸隆のかやのを疑う発言に、
「えぇ~? モネにはかやのさんが本当に動物と話してるように見えたよ!」
「私も・・・・・・わんちゃん達がかやのさんの指示に従って行動しているように見えましたし、何よりこの翻訳機には、かやのさんが指摘した通りの表示をしていましたわ」
「そ、それは・・・・・・」
桃音と紅葉が幸隆に実験の感想と、自分達の意見を述べた。幸隆自身もかやのが動物と会話しているように見えた。見えたのだが、どうしても科学者としての理論が邪魔をしてしまっているのだ。
「ま、信じるかどうかはお前次第、ってな。それよりコイツらとじゃれ合ってたら、もっとモフりたい欲求が出てきたんだが」
かやのは床に転がって、犬と猫に揉みくちゃにされながら欲求不満を伝える。すると桃音がそれを聞いて「そうだ!」と閃き提案する。
「それなら、これからペットショップへ行きませんか? そこなら色んな動物がいっぱいいて、すごーく可愛くて癒されますよ! あぁっ! てか、かやのさん、スカート!」
ミニスカートがめくれて下着が丸見えになっていても、まったく気にしないかやのの裾を直す桃音。今日はトラ柄のようだ。