#4
かやのが西小路に色んな機材を代わりに手にとって見せてもらっている中、後ろの紅葉達と猫とのやりとりが聞こえてきて、違和感を覚えた。かやのは紅葉達の元に歩いていき、
「その猫、その機械で言ってる事と違う事言ってるぞ」
と、彼女達の受信機を指さす。その場にいた全員が「え?」という顔をした。
「そもそもソイツ、地方生まれじゃね? さっきから方言混じりで、すげぇ訛ってる」
呑気に毛づくろいをしている猫を見て、かやのが紅葉と桃音に話す。側にいた幸隆も、
「ほう? かやのさん、その話詳しく聞かせてほしいでゴザル」
とかやのに意見を求めた。するとかやのは三毛猫には猫の鳴き声で、コーギー犬には犬の鳴き声で呼びかけた。二匹はかやのの声に反応して立ち上がり、かやのの横まで歩いていき、彼女にぴったりくっついて座った。
「今からコイツらに協力してもらって、実証してやる」
かやのの指示で、猫の翻訳機を桃音が、犬の翻訳機を紅葉がそれぞれ持つ。そして音声データが映るモニターを幸隆がチェックする。
「その機械、標準語で設定してんだろ? ちょっとこれからコイツに標準語で話すように頼むから、少し待ってろ」
そう言うとかやのはしゃがみ込んで、猫に猫の鳴き声で会話を始めた。それから少しして、基本的な挨拶や、データ上に設定されているワードを猫に鳴いてもらう。すると、翻訳機は反応し、翻訳したワードを画面に表示した。
「コイツの言ってる事とこれに表示されている事の内容がそもそも少し違ってっけど、それはさておき、次は問題の方言」
再び、かやのは猫に先ほどと同じワードを方言で話すように指示する。すると翻訳機は解析不能と画面に表示された。幸隆の音声データ画面では、先ほどの標準語の時の声紋と合致しているように見える。それなのに解析不能なのだ。
「なんで・・・・・・これはバグでゴザルか?」
幸隆は不思議そうに音声データを見ながら首を傾げる。
「いや、バグなんかじゃねぇ。コイツはいま自分の出身地の鹿児島弁で話したんだ。さっきと違うとこがあるとすれば、少し声のトーンが上がってるくらいじゃねぇか?」
かやのの指摘した通り、声のキーがごく僅かに上がった数値が出ていた。