#3
紅葉達が研究室に到着すると、そこには幸隆と桃音の姿があった。桃音はアニーゴを使って、三毛猫に話しかけながら猫じゃらしで遊んでいる。途中、桃音は紅葉達に気付いて声を掛けた。
「あ! 紅葉さん!」
「桃音さん! どうしてここに?」
猫じゃらしを持ったまま、桃音は紅葉に小走りで近寄る。
「お兄ちゃんのお弁当届けに。もー、お兄ちゃんってば、研究に夢中になるのは良いけど、それ以外のことをすーぐ忘れちゃうんだから!」
桃音は幸隆の方を見ながら、やれやれといった身振りで小言を言う。そんな妹の言葉に、幸隆はボサボサの頭をポリポリと搔きながら、
「ハハハ・・・・・・拙者の悪い癖でゴザルな」
西小路は幸隆の口調を聞いて、なぜか箕面市のゆるキャラ『滝ノ道 ゆずる』が頭に浮かんだ。『桜井先輩って、ゆずる君が好きなのかなぁ・・・・・・』と、心の中で呟く。
それから紅葉と桃音が仲良く一緒にアニーゴを使って、先ほどの猫と遊んでいる。二人の手には玩具やおやつが握られていた。
一方、その裏でかやのは気になる機械を物色している。
「かやのちゃん、頼むから壊さないでくれよ?」
西小路はかやのの行動に冷や汗をかきながら見ている。すると、かやのは何の機械かは分らないが、手の平より少し大きいキューブ状の機材を手に取った。
「大丈夫、大丈夫。こんだけ頑丈そうなら・・・・・・あっ」
「あっ・・・・・・」
メキョッ! という音を立てて、彼女の握力で機械が潰れた。かやのと西小路の間で、少し時間が止まる。少しの沈黙の後、かやのは破壊した機械をそっと元の場所に戻した。そして西小路の方に振り返り、
「お前は何も見ていない。いいな?」
かやのは真顔で西小路に黙過するように迫った。西小路も真顔で黙って頷いた。
「とりあえずこれで射してくれたら、僕がそれを代わりに持つよ」
と、西小路がそっとペンライトを手渡した。かやのはそれを受け取り、「じゃあさっそく」と、ライトのボタンを押す。
「あっ・・・・・・」「あっ・・・・・・」
またしても音を立てて破壊してしまう。結局、指さしで指示することになった。