#2
その後、大学の講義室にて。西小路とかやの、紅葉が三人並んで講義を受けていた。紅葉は利き手に包帯を巻かれたかやのの分まで、講義の内容をノートに写している。
講義が終わった後、紅葉は幸隆と会話した内容を相談も兼ねて、かやのに話していた。
「―――という訳なんですの。それで、以前お猿さんとお話ししていたかやのさんなら、今回の事も何とかなるのではないかと思ったんです」
紅葉の話にかやのは目を輝かせている。動物と触れ合えると思い、興味を持ったようだった。しかし、急に暗い顔をして左手を見る。
「怪我してから筋肉の制御がきかねぇんだよなぁ・・・・・・」
左手はよく見ると小刻みに痙攣していた。かやのは机の上のペンを筆箱にしまおうと掴んだ時、彼女の意に反してバキッと音を立ててペンを折ってしまった。
「そ、それなら僕が、かやのちゃんのサポートで一緒についてくよ」
西小路はジムでの事を思い出しながら、かやのと紅葉に提案した。補助というよりは、かやのの破壊行動のストッパー役といったところだ。
「それに僕もその翻訳機ってどんな物か見てみたいしさ」
それから紅葉の高級車の後部座席に、西小路とかやの、紅葉と石丸が対面するように乗り、大学院の研究室に向かっていた。ちなみに今回、稲壱はというと、前回の戦いで妖力を使い過ぎたので、探偵事務所でごろごろしながらお留守番である。
車内では紅葉が石丸の背中を撫でながら、自身の夢を二人に語っていた。
「アニーゴの性能が今よりもっと向上して、より高精度なものになれば、石丸さんといっぱいお話しして、もっともっと仲良くなれれば良いなと思ってますの」
紅葉が語る中、石丸は短い後ろ脚でどこかを掻こうとモジモジし始めた。その様子を見て、紅葉は石丸の首の下辺りを撫でる。
「それに、沢山の人が動物達とコミュニケーションを取りやすくなって、お互いの関係をもっと深めていけるのではないかと」
石丸がずっとモジモジしているのが気になったのか、紅葉は優しく声を掛ける。
「どうしたの、石丸さん?」
「マルのやつ、もうちょい右を掻いてくれって言ってるぞ」
紅葉はかやのの言葉に「えぇ?」と驚きながら、言われたように撫でる位置を変えた。すると石丸のモジモジは治まり、大人しくなった。
「お? なんだ、ここも掻いてほしいのか?」
かやのは石丸の脇腹を四指で撫でてやる。石丸は嬉しそうに喉を鳴らし始めた。他にも石丸の撫でてほしい場所を的確に撫でていく。ついには石丸が自らかやのの膝の上に乗り、腹を見せ撫でられている。
そんなかやのと石丸の様子を見て、紅葉は、
「かやのさん、凄いです! 本当に石丸さんの気持ちが分かっているみたいですわ!」
と、驚いていた。