#10(完)
それから数日後。かやのがやっと意識を取り戻したと、病院から連絡があり、西小路はかやのの入院している病室に駆け付けた。かやのは病院に搬送された際、全身に切り傷や擦り傷と打撲を負っており、出血も酷かったらしい。
怪我の原因はオフロードSWNで山道の走行中に、不法投棄されていた粗大ゴミが雪崩れてきて、それに巻き込まれた、という事になっている。
あの一件で例のリサイクル業者の社長と従業員が逮捕され、その業者との取引も無くなったという。今度は多少経費が掛かっても、しっかり処理やリサイクルを行う業者を探している事を幸隆から聞いた。そして怪異的な事も起こらなくなった事も―――。
「・・・・・・・・・今回、巻き込んでしまって本当にすまなかった」
「まぁ・・・・・・解決して良かったな」
今回の件でかやのを巻き込んで、結果彼女に大けがを負わせてしまった事に西小路は申し訳なく思い、深々と頭を下げた。それに対してかやのは気にしていないと言うように、依頼の解決を労った。
「かやのちゃん・・・・・・」
「んな事より、何か買ってきてくれねーか? 腹が減った」
「・・・・・・りょーかい!」
面会時間が終わって西小路は病院から帰ると、金メダルが事務所のポストに入っていた。メダルを取り出すと同時に電話が鳴った。電話に出ると、勝尾寺の和尚からだった。
人形を預かった日から毎日経を上げて供養をしていたのだが、本日供養をしようと、札で目張りして封印した箱を持ち上げた際に軽く感じた。もしやと思い箱を開けると、中の人形が消えていた、との話だった。
西小路は不安げな顔をして、「そうですか・・・・・・」と言って受話器を置いた―――。
―――その頃、市松人形の持ち主だった孫娘が楽しそうに電話をしていた。そんな楽しげに笑う彼女をカーテンの隙間から、逆さに覗き込む小さな影があった。
『ホホ・・・・・・ホホホホホ・・・・・・・・・』
第八話『朧月』完
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次回、第九話『癒しのオフトゥンは、6月の山にあったのか。』
お楽しみください。