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#8

 西小路はワイヤーを伸ばし、怪物の胴体に巻き付ける。そしてそれを一気に縮め、一瞬で怪物の目の前にまで移動した。それから空中で胴体のワイヤーを解き、先端を太く変化させる。鉄球(てっきゅう)付きの鞭のような形状になったワイヤーを振り回し、怪物の関節部を狙い、鉄球を打ち付けていった。関節部へのダメージで怪物の体勢が崩れる。西小路は着地と同時に、相手の脚部をまとめて薙ぐ。


『ホ・・・・・・ホホホ・・・・・・なか・・・・・・・・・なかマ・・・・・・』


 右側にバランスを崩した怪物は口をガチガチと鳴らして、口内の鋸を回転させる。怪物は腕を地につけて虫のような体勢になり、全身を震わせ金属が擦れる音を出して西小路を()(かく)する。

 先程からの戦いを見ていて、稲壱はある事に気が付いた。怪物は攻撃を受けて破損しても再生を繰り返しているが、一点だけ攻撃が届かないように防御している場所がある事だ。


『センパイ、胸ッス‼ 胸を狙って下さい! そこに何かあるはずッス‼』


 かやのの側にいた稲壱が西小路に大声で助言する。西小路はコクンと頷くと、魔道具のライターを取り出し、左手でギュッと握る。

 怪物は口を開閉させながらガサガサと這って西小路に突進する。それを横に素早く跳躍し、木にワイヤーを伸ばして、空中に飛ぶ。そしてライターを()り、強く息を火に当てた。まるで火炎放射のような狐火が怪物に伸びていく。背面から焼かれた怪物は、可燃部分のパーツや耐火性の無い部分が燃え、溶けていった。『アァァァァァ』とノイズの悲鳴をあげながら()(ちゃ)()(ちゃ)な動きをする怪物は、着地した西小路を目掛けてぎこちない動きで口を開閉させ、迫って来る。


「これでも喰らえっ!」


 西小路はライターに呪言を呟き、逆手のサイドスローで怪物の口にそれを投げ込む。怪物の口が閉じた瞬間にライターが爆発する。口内の鋸は急な高熱で溶かされ、そして頭の下部分とそこから繋がる胸部の装甲が吹き飛んだ。

 狐火により関節部分が溶け、さらに冷え固まった事により、動きが鈍くなった怪物の胸がガラ空きになった。胸の装甲が外れた事で剥き出しになった金庫の扉に、ワイヤーを伸ばし絡める。そしてワイヤーの途中を木の幹にかけて引っ張る。ギシギシと音を立てるが、びくともしない。


『オレも手伝うッス‼』


 かやのの側についていた稲壱が再び化け狐の姿に変化し、怪物の胸の金庫の扉に手をかけ、開けようとする。「ギ、ギ、ギ・・・・・・」と開きそうになるが、核を守っているだけあって、強い抵抗を見せる。


『クソッ! あと少しなのに‼』

「ヤバイ・・・・・・再生を始めてる! それにコレも・・・・・・」


 怪物は周りの残骸を呼び寄せ始めていた。西小路の魔道具も悲鳴を上げ始めている。力を引き出し過ぎたのか、道具の妖力が弱まってきていた。

 その時、ワイヤーを引く西小路の背後から、フラフラと足を引き釣りながら、かやのが歩いてきていた。


「かやのちゃん‼」

『姐さん‼ 気が付いて・・・・・・』


 二人が開けようとしている金庫に目をやり、


「あの金庫・・・・・・ブチ破りゃ良いんだな?」

「でもかやのちゃ―――」


 かやのが左手をグッと握り締める。右手は稲壱を助けた時に砕けたのか、ダランと力なく垂れ下げていた。かやのを心配する西小路の言葉を遮り、


「一発で決めろよ?」


 核が守られる扉を見つめ、西小路にかやのが呟く。西小路はかやのの思いを受け止め、


「任せてくれ」


 と強く頷き、応える。その言葉を聞いた瞬間、かやのは気力を力に変え、怪物に向かって走り出した。既に肉体は限界を超えていた。


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