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#6

 その事故の一部始終を見ていた稲壱もまた、これから怪異に襲われようとしていた。無機質な『ホホホ』という声と共に、ノイズ混じりの声で『ナカマ、ナかマ、仲間』と辺りのゴミから聞こえている。稲壱の周りの粗大ゴミやマネキンが浮き上がり、稲壱を取り囲んでいる。仲間と言いつつも、辺りの無数の廃材は稲壱に勢いよく突進してくる。


『クッソ! 何だよ、コイツら!』


 稲壱は体を(ひるがえ)しながら突進を避けるが、あとからあとからキリがない。他の廃材同士ぶつかって原型がなくなるくらいに壊れても、残った大きい部品が飛んでくる。


『グエッ‼ イッテェェェ! やりやがったな!』


 無数にばらけた廃材が稲壱を襲い、避け切れなかった部品が稲壱の背中に当たる。大きく吹き飛ばされた稲壱にマネキンや冷蔵庫、パイプ椅子などが突っ込んでいく。


『あんま・・・・・・調子乗ってんじゃ・・・・・・・・・ねぇぞぉぉぉおおおおお‼』


 まるでゴミ山のようになった塊の中心から、稲壱が自分に(まと)わりつく廃材を吹き飛ばした。以前、西小路達と戦った時の化け狐姿になり、その力で廃材の拘束を解いたのだ。吹き飛ばされた廃材の中に、強烈な程の禍々(まがまが)しい怨念を放つ存在がいた。それはあまりの執念にドス黒い気を纏っており、『ホホホホホ』と笑いながら夜の闇に溶けた。

 吹き飛ばされた廃材が再び集まり、ガチャガチャと音を立てて巨大な怪物が組み立てられていく。組み上がったそれはまるで蜘蛛と人を合わせたような姿をしており、人の腕の形をした六本の脚部をもつ下半身と、そこから上部に伸びる人型の体。カニを思わせるような巨大なペンチの腕を持ち、頭部は人間の女児を思わせるような造形をしていた。


『ホホほホホホほほホホほホ』


 見た目の気持ち悪さに加えて、不気味な笑い声。化け狐である稲壱ですらも、その姿に戦慄していた。しかし、今は臆病風に吹かれている場合じゃない。稲壱の周りには四つん這いになったマネキン達や、人型を模した物体に取り囲まれている。


『コイツら・・・・・・・・・』



 その頃、西小路達はオフロードSWN(スワン)で勝尾寺方面に向かって山道を疾走していた。


「なんか変な音聞こえねぇか?」

「うん、ガシャガシャ、金属みたいな音とそれに混じって木が折れるような音も」


 先程から稲壱と念話が通じない事に、稲壱の身に何かあったのではないかと、二人は焦っていた。「急ごう!」と西小路が道路を逸れて、音がする山の中に入っていく。それにかやのも続く。

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