#7
野生の猿に当然追いつく訳もなく猿を見失い、最後に見かけた猿の逃げた方向や、折れ散った枝葉の痕跡を辿って二人は歩いていた。
「見失ってしまいましたね・・・・・・」
「ハァ、ハァ、でも猿が逃げてった方向的にはこっちの方だったよね・・・・・・」
猿を追いかけている途中に紅葉は途中で足をくじいたようで、先ほどから痛めた足を庇うような歩き方に西小路は気付き、
「足、大丈夫かい?」
と、紅葉の足を見ながら声をかける。
「これくらい、石丸さんの事を思えば、大したこと・・・・・・痛っ!」
「無理はしない方がいいよ。荷物は僕が持つから貸して?」
西小路は彼女の荷物を代わりに背負い、獣道で紅葉が転倒しないように手をとって支えながら先導して歩く。
「・・・・・・ありがとうございます。そういえば・・・・・・ちょっと気になってたんですけど、西小路さんはどうして大阪箕面大学に入学しようと思ったんですか?」
「僕は未だ解明されてない古代文字とかを解読したり、その研究をしたくてさ。小野原さんこそ、どうして?」
「私はありきたりかもしれませんが、色々な国の言葉を学びたいんです。将来的にも必要になってきますので・・・・・・」
少し気恥ずかしそうに鼻の頭を指でかいて答えた紅葉。
「あと、西小路さんはどうして探偵に?」
「悩みを抱えるクライアントの代わりに調査をするエージェント。そんな風に、僕はなりたくてね」
紅葉の質問に、キリッとした顔で答える西小路。
「では西小路さんは今まさに、困っている私の力になって下さっているエージェントですわね」
そんな西小路にクスッと小さく笑う紅葉。そしてかやのの事も気になっていた彼女は、かやのの動機についても西小路に尋ねた。
「かやのちゃん? う~ん、僕もよくわからないんだけど、ヒト以外の生物の言語について、証明したいとかなんとか言ってたような・・・・・・」
彼の解答に紅葉は不思議そうな顔で頭にハテナマークを浮かべていた。
「まぁ、詳しいことはかやのちゃん本人に聞いてみるといいよ」
彼女が「そうします」と頷いて間もなく、そう遠くない場所から猿の鳴き声と、それに混じって別の何かの鳴き声が聞こえてきた。
「この声は・・・・・・石丸さん⁉」