#7
そして数日が経ち、ついに迎えた本番当日。スタジオ内で最終リハーサルが行われていた。三人でダンスと歌を合わせながら、それぞれの強い思いを胸に抱いて、本番前に気合いを入れる。舞う度にキラキラと汗が輝く。
夜景の映像を目の前に、自室でバスローブ姿の王がシャンパングラスにジンジャーエールを、まるでシャンパンのように注ぎ入れる。そして夜景が映されたモニターに向かってグラスを掲げた。
「さぁ・・・・・・はジめよウか」
KINGの顔がモニターに映し出される。いつもとは違った背景や演出に、コメント欄が既に沸いている。軽快な音楽と共にKINGのトークが始まった。
『―――というワケで、今日は皆に紹介シタイ者達がいる。この三人だ。来てクレ、Mone! Maple! Caroline!』
KINGの紹介と共に、Mone(桃音)とMaple(紅葉)とCaroline(西小路)が手を振りながら、元気よく走って登場した。衣装はアイドル衣装ではなく、普段着バージョンだ。
Mapleが左手を上げると、バイオリンが発現して右手に弓が伸びる光のエフェクトと共に出てきて、バイオリンの旋律と共に曲が始まった。音源も合成編集ではなく、本物の楽器演奏なので、迫力が違う。この時点で既にスーパーチャットを送る者もいた。
春風に乗って花びらが 滝の道へ舞い降りた
流水にタッチした 擦れ違っていたかもしれないキセキ
遥か遠い 高い空見上げて 輝く明日のために 巡る未来
Moneが明るく可愛い声で歌い出す。歌に合わせて、配信画面には歌詞と効果がポップに表示される。コメント欄もMoneの可愛さに乱舞するコメントが流れ始めていた。
大胆不敵のあの子
憧れのあの子は いつまでも振り向いてくれない
時めく胸 ありえないでしょ だって 煌めく胸 だって
立ち止まると 切なさと戸惑い 二人の距離縮めたい
可愛らしい仕草のMoneにMapleも歌とダンスで参加する。軽快なステップと共に水面のようなステージに波紋が広がり、そして重なっていく。
宝物は間取りに詰めよう 扉を開けて飛び出そう
ここでCarolineのパートがくる。高度なボイスチェンジャーを使って自然な女性の声にしてある。見た目の印象通り、クールな歌声だ。中身が男だとは誰も気づかないだろう。
ただ、一人を除いては。
「・・・・・・ダンテ?」