#2
大学寮一階のコミュニティー広場のソファーで、深刻な顔をした西小路がかやのと向かい合って座っている。机の上には数枚のメダルが並べられていた。
西小路は今まで自分達の周りで起こった出来事、自分達が関わった出来事をかやのと共に振り返って思い出していく。思い出す度に段々とじっとりした汗をかいていく二人。そして一層不安がっている西小路に対して、かやのが口を開いた。
「―――よくはねぇだろうな・・・・・・大体、相手によって受け取り方は様々だしなぁ」
かやのが話している時に、
「かやのサーーーーーーン‼」
と、西小路とかやのの元に、勢いよく王が走って現れる。急に現れた王に、西小路もかやのも驚いた。かやのに会えてとても嬉しそうな王に、
「お前どうしてここに? 寮のセキュリティはどうした⁉」
と、かやのが言うと、王はポケットから少し前に壊された車のエンブレムを取り出しそれを二人に見せる。エンブレムにはチェーンが付いており、その先に鍵が付けられていた。
「フフフ・・・・・・あれカラ大学までの通学が難しくなってネ・・・・・・」
「「そ、そうか・・・・・・」」
西小路とかやのは冷や汗をかいて、王から視線を逸らした。王は続けて、
「だからオレもコノ寮に住んでヤル事にシタヨ! これかラは、ルームメイトだヨ!」
と、にんまりと笑った。
「それで、早速オレの部屋にかやのサンを招待したいヨ!」
「はぁ? なんで俺がお前の部屋なんかに・・・・・・うっ」
かやのが言いかけて、言葉を止めた。王が大切そうに握るエンブレムが視界に入ったのだ。かやのはバツが悪そうに、
「ま、まぁ・・・・・・新居祝いっつーことで、仕方ねぇな」
そう言って立ち上がる。西小路もかやのに続いて立ち上がるが、
「西小路! オマエは呼んでネェヨ!」
と、こめかみに血管を浮き上がらせた王にギロリと強く睨まれた。
とは言っても、かやのと王が二人きりになるのは気になる西小路。かやのを王が部屋に招き入れている様子を、少し離れた通路の先から見守っていた。かやのが王の部屋に入って、一、二分もしないうちに、
「ギィヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」
と、かやのの悲痛な叫びが通路にまで響き渡る。
「かやのちゃんっ⁉」
西小路が慌てて王の部屋に向かうと、勢いよくドアが開き、中からかやのが靴も履かずに飛び出してきた。西小路にぶつかるのもお構いなしに、走り去っていってしまった。
西小路は「イテテ・・・・・・」と肩を押さえ、何があったのかと、王の部屋の中の様子を覗いた。そこには、かやのの盗撮した写真を引き伸ばしたポスターが壁一面に飾られていた。
部屋の中で一際目立つのが、かやのと王がウエディング姿で、キスシーンを合成された特大パネル。それがウエディングドレスと共に設置されていたのだ。
「うっ・・・・・・!」
あまりに強烈な光景に西小路は背筋に冷たいものが走った。彼が足元を見ると、かやのに蹴られたのであろう、涎と鼻水と涙を垂らしながら股間を押さえ、虫の息状態になっている王が転がっていた。その姿を見て、西小路は「うわ・・・・・・」と頭を押さえながらも、目の前の王を介抱しようとする。
「王君、大丈夫か⁉」
「か、かやのサンに・・・・・・気持ち、アピ・・・・・・ルしたクテ、部屋・・・・・・つくタヨ。悪気・・・・・・ないヨ。オレ・・・・・・に・・・・・・さわるんじゃネェヨ・・・・・・西、少路・・・・・・」
そして王は気を失った。
「王くーーーーん⁉」