#10(完)
大会が終わり、ローガンは応援に来てくれた西小路とかやのと紅葉に、爽やかな笑顔で感謝の言葉を伝えた。そしてローガンは紅葉の前に改めて向き直して、照れくさそうな顔でこれからも応援に来て欲しいと、どもりながらも一生懸命に伝えた。
「え、えぇ。また機会があれば、またかやのさんと・・・・・・」
と、紅葉は冷や汗をかきながら、社交辞令で返答した。だが、ローガンは彼女の意図には気付けず、純粋に喜んでいた。
「グレートフレンド、ユーも来てくれて、ミーはベリーハッピーだよ! 本当に今日はサンキューベリーマッチ」
「僕の方こそ、学ぶ事が多かったよ。ありがとう、ローガン」
西小路とローガンは漢の固い握手を交わした。
その後、事務所に戻った西小路は、大会でまとめたメモを見返して、トレーニングメニューを考えていた。
チャリンッ! 不意にドアポストの中に、何か硬い物が入れられる音が彼の耳に届く。
西小路が蓋を開けて中を確認すると、銀メダルがドアポストの底で光っている。
「これは・・・・・・・・・やった! 銀だ!」
西小路はメダルを手に取って、「ニカッ!」と歯を光らせた。
後日、ジムの壁一面の大鏡の前で、西小路はローガンが大会最後に魅せたサイドチェストの真似をしていた。「ニカッ」と彼の笑顔をイメージして笑顔を映す。だが、西小路の笑顔はローガンのそれとは違い、爽やかではあるが、だいぶ気持ち悪い笑顔となっていた。
そんな西小路の背後から、スキンヘッドの色黒中年ボディビルダーが近づいてきた。彼はその逞しい右手で、西小路の右尻の肉をおもむろにむんずと掴み、
「おお! お兄さん、見事なグレートプリケツだねぇ‼」
と、空いた手で西小路の左肩に手を置いた。そんな突然の事に西小路は、
「ひぇやぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
いつかの薔薇の世界を思い出し、心に深いトラウマを植え付けられた。
この日を境に、ジムで西小路の姿を見かける者はいなかった・・・・・・。
第六話『陽炎燃ゆる、ラブマッスル‼』完
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次回、第七話『OH! by 桃李』
お楽しみください。