表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアドラ ーReturn to the Draftー  作者: Tsuyoshi&松山亮太
第五話『紅の薔薇』
49/128

#9

 未だ燃え盛る工場内にいたかやのとマコトは、西小路達の脱出した場所まで来ていた。しかし、かやのは多量の煙を吸引した状態で動き回っていた為、視界も歪んでフラフラだった。彼女は窓を背にして立っており、正面からはガスマスクを着けたマコトが長い鉄棒の(こて)を構えて迫ってきている。

 その様子を下から見た西小路は縄の端を持ち、ピンッと張るように腰を落として引っ張る。かやのが同じように滑り降りてきた時にバウンドしないようにする為だ。

 一方、かやのの方でも動きがあった。マコトが鏝をバットのフルスイングのように構えながら、かやのに突っ込んで来た。

 かやのは「ここだ!」と叫び前に出て、マコトの横薙ぎを、身を屈めて避ける。その直後にマコトの右腕手首を自身の右手で掴み、左手を相手の背中に添えるように押さえる。そのままマコトの勢いも利用し、彼を窓にぶち当てて思い切り窓を突き破った。

 飛び散るガラス片と共に、空中に飛び出す二人。そして空中でかやのは器用にも、変形ロメロ・スペシャルをマコトに仕掛け、見事に決める。

 その直後、建物内で再び爆発が起き、窓から爆風が吹き出し、二人を更に加速させた。夕日に照らされた二人のその光景は、まるでアメリカンバイクに跨るハードボイルドな姿を彷彿とさせる。

 そしてかやのとマコトは縄に着地し、マコトの股間と、かやのの尻に縄が食い込む。

 一度バウンドしたが、バランスを立て直して再びマコトの股間に縄をしっかり食い込ませ、勢いよく滑り出す。

 マコトは両腕と両足をしっかり()められているせいで、股間を削る縄から全く逃れられない。結構なスピードが出ており、ジョリジョリジョリリリリリリリ‼ と股間部分から聞いていて痛い音を立てているが、


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼‼」


 という、マコトの本気の悲鳴にかき消されていた。


「マコトさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん‼」


 夫の股間から真っ赤な薔薇の花びらが飛び散る様を、地上からアイも目撃していた。

 そしてもう一人、地上で悲鳴を上げている人物がいた。


「うわぁぁぁぁぁ‼ こっち来んなぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」


 目の前からほぼ全裸のガチムチな変態男が、股間で縄を滑りながら自分に向かってくるのだ。正直、目にしたくない光景だ。変態が終着点の鉄ポールに近づいて来て、西小路は耐え切れずに縄を放す。

 その瞬間、縄がたわみ、フワッとマコトとかやのの体が浮く。だが、慣性は働いており、そのままの勢いで鉄ポールの先端にマコトの股間が直撃する。


「カヒュッ・・・・・・‼」


 グシャッとも、グチャッとも、形容しがたい音を立てて、彼の薔薇が無残に散った。マコトはその痛みと苦しみから、声が出ずに息だけが勢いよく漏れる。そして痙攣(けいれん)しながら崩れ落ちた。文字通り玉砕(ぎょくさい)していた。

 上手く着地したかやのは撃沈したマコトを見下ろしながら、


「初めて女で良かったと思ったわ。ケツはイテェけど」


 そう言ってケラケラと笑って、腰に両手をあてながらドヤ顔をする。


「あれは・・・・・・あれはまるで『地獄のロープダビッドソン』だわ。・・・・・・・・・素敵」


 腰をくねらせながら、アイは彼女の変形ロメロ・スペシャルに、うっとりしていた。


『あんなんアカンてぇ・・・・・・凶悪過ぎやってぇ・・・・・・』


 ドヤ顔のかやのを見上げながら、稲壱はガクガクと震え上がっていた。

西小路は痙攣するマコトを見て、かやのの凶悪技に戦慄(せんりつ)していた。

アイは「にちゃあ・・・・・・」という、いやらしい笑みを浮かべながら、マコトをねっとりと見つめて、


「ウフフ、これで二度と浮気は出来なくなったわね。・・・・・・これからはアタシがマコトさんをたっぷり可愛がってあげるわぁ」


 そう言って舌なめずりをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ