#7
かやのは先走った西小路を止める事が出来ず、自身も物陰から出てしまい、マコトに見つかる。
「なんだ、お前らは⁉ 撮影の邪魔をするな‼」
「エイク君、大丈夫かい⁉」
「に、西小路君・・・・・・」
突然の西小路の登場に、驚きながらも激昂するマコト。そして目を潤ませて西小路を見つめるエイク。
マコトは西小路に向かって鞭を振るう。鞭は西小路の予想以上に速く、見切る事が出来ず直撃してしまう。マコトは鞭の手を緩めない。どんどん埃が舞い上がっていく。
「くっ! 速い! いっつ⁉」
マコトの振るう鞭を全て受けてしまい、西小路は動けないでいた。
「あ~~~、もうイライラする‼」
見るに見かねたかやのが、助走をつけてドロップキックをマコトにヒットさせると、彼は「ぐあっ‼」と声を上げながら吹き飛ばされた。
「ダンテ、ここは俺に任せろ。お前はエイクを連れて、さっさと逃げろ」
かやのは近くの撮影セット用の飾りのカーテンを引き千切り、それを二人の方に投げる。
西小路は投げられた布を掴み、エイクの肩に掛けた。そのまま彼を支えて立ち上がる。
そうはさせるかと、起き上がり際のマコトが鞭で床を薙ぎ払う。かやのはそれをジャンプで避けたが、そのせいで鞭が蝋燭を飛ばしてしまい、装飾の布に当たって火が移ってしまった。
妖艶な世界を演出しようとしたのが仇になり、周りにあっという間に火が回った。
火の勢いに怯み、西小路とエイクは後ずさり、かやのの近くに来てしまった。かやのはその二人に舌打ちをし、戦い方を変えた。火に囲まれていてもマコトはずっと鞭を振り回し続け、かやのは鞭を拳で弾くように防御する。
煙が建物内に充満していき、次第にかやのもむせ始めた。
ふいに鞭が西小路達の方に飛び、それをかやのが右腕で受け止める。鞭が腕に巻き付く。
「ダンテ、エイク、布被って伏せてろ!」
二人は訳が分からないまま、かやのの言う通りにした。その瞬間、かやのは鞭の巻き付いた腕を思い切り引き、自分もマコトに向かって勢いよく踏み込む。そして体勢を崩したマコトに思い切りラリアットをかました。
マコトが床に叩きつけられた瞬間、小規模だが爆発を起こした。衝撃で舞い上がった埃に引火して、粉塵爆発を起こしたのだ。
「かやのちゃん!」
西小路はかやのの身を案じて声をかけると、咳き込む彼女から「俺は良いから逃げろ」と返ってきた。かやのはこの爆発まで見越していた為、服の一部が燃えて軽い火傷程度で済んでいた。
「今の爆発でこの辺の火は吹き飛んだけど・・・・・・」
多分またすぐに火が戻るだろう。逃げるなら今しかない。だがどこに? 壁にも燃え移っていて入口の方には戻れない。その時、稲壱の声が西小路の脳内に響いた。
『センパイ、上の方ならまだ火が回ってないッス!』
西小路は上を見ると、まだそこまで燃えていなかった。布でエイクの裸体を隠し、肩を抱き支えながら、階段を使って上を目指す。