#4
翌日、早朝。探偵事務所にて。再び例の依頼人のアイが事務所を訪れており、西小路が話を聞いている。今回は隣にかやのも座っていた。
西小路は愛想笑いをしながらも、やはりその手の話が苦手なのか顔に出てしまっている。
そんな西小路に反して、かやのはニヤついた顔で話の相槌を打っていた。
「―――というわけで、この話受けてくれるかしら?」
「・・・・・・えぇっと・・・・・・・・・はい、お受けさせて・・・・・・いただきます」
まだ迷いがあり口籠っていたが、隣のかやのに肘でせっつかれ、更に目の前のアイの熱い眼差しに気圧され、西小路は渋々ながら了承した。
それから調査はすぐに開始された。アイとマコトの住んでいる家の近くから張り込み、マコトがスーツ姿で家を出たところで二人は尾行を始めた。
西小路達は対象に気付かれないように、一定の距離感を保ちながら後を追った。アイの話ではマコトは電車通勤で、営業関係の仕事をしているとの事だったが、一向に会社に向かう様子はない。それどころか如何わしい物を扱う店が立ち並ぶ通りに来ていた。
ここに紅葉がいなくて良かったと思う西小路。
「おっ、入ったぞ」
かやのが西小路の肩を叩き、一件の店を指さす。その店は誰が見ても明らかなアダルトグッズ専門ショップ。しかもSMグッズを中心に取り扱っている店のようだ。かやのは普通に店の中に入ろうとするが、西小路は躊躇している様子。
「何ビビッてんだ? これも探偵の仕事だろうが! ほれ、行くぞ!」
「いやじゃああああ‼ まだ心の準備がぁ~!」
嫌がる西小路の腕を掴んで、SMショップの中に連れて行こうとするかやの。傍から見れば肉食系女王様と草食系M男のカップルのように見える。
それからも、色々な場所を巡るマコトを尾行していた。西小路はかなりげっそりしており、目も死にかけている。かやのはそんな西小路の腕を引っ張り、尾行を続けていると、マコトが喫茶店に入っていった。続けて二人も入店する。
「おいダンテ・・・・・・おい、しっかりしろ。エイクが来たぞ」
エイクの名前に反応した西小路は意識を取り戻し、急いで二人の逢い引きをスマホのカメラで隠し撮った。勿論その後、喫茶店から出て、そのままホテルに入る二人の姿もしっかりカメラに収めた。