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リアドラ ーReturn to the Draftー  作者: Tsuyoshi&松山亮太
第四話『ソウテイのミラージュ』
37/128

#7

 署内に着いたエイクは、狭い個室に通され、警察からいくつか質問を受けていた。


「この女性達の写真、これに見覚えは?」

「この写真の女性達は、ワタシが絵のモデルの依頼を受けて、モデルにした人達です」


 その男の隣でもう一人の警察職員が会話内容を記録している。


「・・・・・・そうか。じゃあ質問の仕方を変えよう。君は最近、女性が連続で行方不明になっている事件を知っているかな?」

「・・・・・・いえ、知りません」

「嘘は良くないな。正直に知っている事を話しなさい」


 取り調べを行う警察職員の眼光が鋭く光った―――。



 その頃、車通りの多い大通り。王の車が道路交通法を完全無視で大暴走していた。


「おい、ダンテ~、こっちで道合ってんのか?」


 運転しているのはかやので、アクセルを踏んだまま、後部座席の西小路に顔を向ける。


「うんっ、間違いないよっ! かやのちゃん! 前見て、前! うわぁぁぁぁぁぁ‼」


 西小路は後部座席でGPSを起動して、かやのに絶叫しながら道案内をしていた。


(ねえ)さーーーん‼ 死ぬッ、死んじゃうッス‼』


 車体が左右に激しく揺れており、かやのから連れて来られた稲壱も生きた心地がせず、涙目になっていた。王の車は前後二人乗りで、更に車体も低いので、曲がる時の遠心力を特に感じやすい。

 西小路は顔を青くして必死にシートの手すりを掴み、稲壱はそんな西小路の体に爪を立ててしがみつく。そんな二人に反して、かやのはまるでゴーカートを初めて運転した子供のように楽しんでいた。


「この車おもしれぇな‼ ・・・・・・つーか」


 かやのはフロントコックピットに映るバックモニターをチラリと流し見る。


「いつまで着いてくんだ? アイツら」


 かやのの車の後ろには数台のパトカーがサイレンを鳴らして着いて来ている。


『そこの車、止まりなさい!』


 かやのは大通りから(さい)()方面に急ハンドルを切る。追尾しているパトカーの何台かは、曲がりきれずに横転した。

 静かな田舎道にサイレンの騒音とエンジンの爆音が鳴り響く。


「こっちで良いのか⁉」


 かやのは西小路に道の確認をして、


「うん! そのまま山道に入って‼」


 途中で再びハンドルを切り、そのまま山道に突入する。連続した急カーブでも速度を緩めず、ガードレールや山壁にぶつけて車体を削りながら爆走。遠くの方でサイレンが聞こえる。どうやら、かなり引き離したらしい。


「やっと居なくなったか~。んで、次は?」


 かやのがコックピットに映る後部座席の映像を見ると、西小路と稲壱は白目を剥いて撃沈していた。それを見たかやのはアクセルベタ踏み状態から、突然急ブレーキをかけた。ガックンと大きな反動を受けて、後輪が高く浮き上がり、強い衝撃と共に着地した。


「・・・・・・・・・ハッ‼ 僕は生きてるのか・・・・・・?」

「起きたか? 目的地はどの辺だ?」


 後輪着地の反動で息を吹き返した西小路に、かやのは容赦なくナビの続きを要求する。西小路がナビ画面を見ると、山の中に矢印がついていた。

 それを彼女に伝えると「じゃあ行くか」と道の無い方向を見て、エンジンを空吹かすかやの。西小路と稲壱はガクガク震えて抱き合いながら、「「やめてー‼」」と絶叫気味に懇願するも、彼らの願いは彼女には届かなかった。


「しっかり掴まってなぁ!」「「いやぁああああああああああ‼」」



 ――― 一方、エイクは未だ署内で事情聴取を受けていた。


「さっきから黙ってないで、正直に言ったらどうだ? あの時間、何をしていた?」

「・・・・・・・・・公園でデッサンを描いていました」

「それを証明出来る人物は?」

「・・・・・・・・・・・・」


 自分のアリバイを証明する事が出来ず黙秘をするエイクに、警察は大きく息を吸い、


「・・・・・・お前がやったんだろ! さらった被害者達はどこにいる! もしかして、もうどこかに埋めたのか⁉」


 エイクを最初から犯人と決めつけ、圧迫尋問をする。

 高圧的な取り調べをする警察に対し、エイクはついに耐え切れず、


「違う・・・・・・ワタシは生活費を稼ぐ為に女性を描いている! でも本当は・・・・・・男を描きたいんだ‼ ワタシは男が好きなんだーーー‼」


 と、衝撃の真実を叫ぶ。一瞬、場が静まり返り、気まずい空気が流れる。

 エイクは深呼吸をして息を落ち着かせてから、あの時自分は公園で野球をする青年達を模写していた事を警察に告白した。

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