#6
しばらく、校内でエイクを探していた西小路だったが、全然見つからなかった。美術学部の生徒達にも聞いてみたが、皆「知らない」と答える。
既に大学には残っていないと判断し、西小路は近辺を探そうと、大学の外に出た。その時、西小路のスマホが鳴った。画面には『小野原紅葉 自宅』と表示されていた。
「はい、もしもし」
「西小路様の携帯で宜しいでしょうか?」
西小路は電話に出てみると、相手は紅葉の家に仕える執事からだった。
執事はピアノ教室の時間を過ぎても紅葉が現れないと、教室から電話があった事。また家にも帰っておらず、スマホも繋がらない事。もしかして西小路なら何か知っているかもしれないと、深刻そうな声で尋ねた。
「紅葉さんなら、だいぶ前にピアノの教室があるからと・・・・・・はい。えっ⁉ 連絡が取れない⁉」
西小路は思わず声を荒げた。徐々に顔が真っ青になっていく。西小路は電話を切った後、急いでカフェへ戻ってきて、
「かやのちゃん、稲壱君を貸して! 紅葉ちゃんが居なくなったんだ‼」
店に入ると同時に、カウンターに居たかやのに詰め寄った。
「落ち着け、ダンテ。稲壱より良いもんがある」
かやのはそう言い、エプロンを外して店を出た。そして屋外席の柵まで歩いていく。
「よぉ、王」
「・・・・・・アレ? かやのサン? ナンデ・・・・・・」
そこには店内から死角になる位置でポラロイドカメラを使い、かやのを盗撮していた王が屈んでいた。かやのは自分がミニスカートであることも気にせず、高く足を振り上げた。
「オッフォオオオ⁉」
王は目の前に広がる夢のような光景に一瞬我を失い、本能のままにシャッターを切った。ジーッという無機質な音と共に、ヒョウ柄の下着がドアップで写った写真がカメラから吐き出される。
王が落ちた写真に気を取られた瞬間、かやのが無言で彼のカメラに踵落としを決め、そのまま写真もろとも粉々に踏みつぶした。
「車の鍵をよこせ」
一方、エイクは箕面船場にある杉谷公園のグラウンドで、ベンチに座ってデッサンを描いていた。その時、不意に何者かに声を掛けられ、声の方向に顔を向けた。
「警察の者ですが、エイクさんで間違いありませんね? 貴方にお伺いしたい事があるので、署までご同行お願いしても宜しいでしょうか?」
「は、はい・・・・・・」
エイクは警察職員に事情聴取を求められ、参考人として箕面警察署に連れていかれた。