#3
紅葉がいつもの笑顔で二人を室内に招き入れる。部屋の中も豪華な装飾で飾られ、まるでルネッサンス期の王宮を思わせる内装だった。
西小路は目の前に広がる光景に、
「おぉ! 部屋の中も凄いね!」
と驚きを隠せない様子だが、かやのは西小路よりも更に、
「馬鹿、スゲェなんてもんじゃねぇ! 紅葉オメェ、王族だったのかよ‼」
と驚愕の表情を見せる。
「・・・・・・あの、紅葉さん。この肖像画なんだけど―――」
驚いている二人を見て「大げさですわ」と笑う紅葉に、エイクが声を掛けた。先ほど描いていた紅葉の絵は完成しており、それを自身の作品を載せているSNSに掲載して良いか交渉を持ちかけた。
その間、西小路とかやのはその肖像画と紅葉を何度も見返して、「凄い凄い」と大はしゃぎで絶賛している。
「・・・・・・気恥ずかしいですけど、分かりましたわ」
エイクと紅葉の交渉が終わったようだ。
絵の前ではしゃぐ二人を見て、エイクはニコッとはにかみながら、「良かったら・・・・・・」と西小路のすぐ隣に立ち、先ほど描き上げた紅葉の絵も掲載された自身のSNSのページを開き、西小路とかやのに見せた。そこにはエイクがこれまでに描いてきた絵がズラリと並んでいた。
かやのは終始「スゲェなお前」とテンション高めで見ていた。はじめは西小路もかやのと同じように見ていたが、途中から何かに気になった様子で、腕を組んで自身の顎先に握った手を添えて、考えるそぶりを見せた。
そこに十二時を知らせる時計の鐘が鳴り、紅葉は三人に昼食を勧めるが、エイクは「用事があるので」と断り、紅葉と西小路とかやので昼食をとる事になった。
食事はフランス料理のコースのような内容で、紅葉とかやのはナイフとフォークを使いこなして食べていたが、西小路は不得手なようで箸に代えてもらっていた。
紅葉の足元では石丸と稲壱が餌を食べている。そして先に餌を完食した石丸は稲壱の餌も狙うが、稲壱がクワッと睨みつけ威嚇し、威嚇された石丸はビクッとしていた。
食事が終わると、三人と二匹は庭園を散歩したり、ティータイムを楽しんだりして過ごした。自宅に友達を呼んでお茶をしたり、おしゃべりをして過ごす時間に、紅葉は「いつまでもこんな時間が続けば良いのに」と、思っていた。