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リアドラ ーReturn to the Draftー  作者: Tsuyoshi&松山亮太
第三話『スプリング・ハリケーン』
30/128

#10(完)

 ―――とあるオフィスの一角で、事務作業を行っている女性の後ろ姿があった。


『キュー・・・・・・キュー‼』


 壁に設置されている書類棚の下部の引き出しの奥。その中に動物が出入り出来る扉が付いており、そこから石丸が上半身を出している。腹の肉が引っかかり、扉をくぐれないで藻掻いていた。


「やれやれ、またですか? 少しは痩せないと駄目ですよ。これ、今回のメダルです」


 女性は石丸を引っこ抜くと、銀のメダルを石丸に咥えさせる。石丸は扉に戻るが、


『キュー・・・・・・』


 当然、肉が引っかかる。女性は石丸の尻を押して、キュッポンッという音を立てながら石丸を扉の奥へ押し込む。

 石丸が通った扉を抜けた先は、持ち運び可能なペットケージの中だった。



 ―――化け狐との戦いから、数日後。探偵事務所には、身体中に(ばん)(そう)(こう)を貼った西小路と、生理の痛みとそれの鬱憤(うっぷん)を晴らせて機嫌が良いかやの。怪我をしている西小路を心配しながらお茶を沸かしている紅葉、それに床に転がっている石丸がいた。そしてもう一匹。


「可愛らしい子ギツネちゃんですわね。名前はもう決まってますの?」


 紅葉が二人の前に紅茶を置き、かやのの足元にお座りしている子狐を見て名前を訊ねる。


「この子の名前は・・・・・・」「(いな)(いち)だ。かっこいいだろ?」


 西小路が答えようとすると、かやのがそれに割り込む。彼女は稲壱と名付けられた子狐を優しく抱き上げ、自分の膝の上に乗せながら答えた。

 結局、『西小路を襲い、大学でも噂になった狐』は西小路とかやのに捕獲されて、箕面の山に放された事になっていた。そして、その際に親とはぐれた様子の子狐を見つけて、そのまま保護したという話で、事前に紅葉に説明していたのだ。

 稲壱は笑顔のかやのから耳や尾を(いじ)り回され、大人しくされるがままだが、もの凄く嫌そうな顔をしている。


「稲壱ちゃんが来て、この事務所も賑やかになりますわね」


 かやのの膝に乗る稲壱を見つめながら、紅葉が「ウフフ」と優しく微笑(ほほえ)む。


「石丸さんもお友達が増えて良かったですわね・・・・・・って、石丸さん? その口に咥えてる物は・・・・・・?」


 そう言いながら紅葉が石丸の方に目をやると、石丸が銀色に光る物を咥えている事に気が付いた。


「これは・・・・・・メダル? もう、石丸さん。何でも口にしちゃダメですわよ」


 紅葉が石丸の口からメダルを取り出すと、


「・・・・・・えっ? あっ! かやのちゃん! 銀メダルだよ!」

「・・・・・・っ! マル、お前一体どこでこれを⁉」


 それを見た西小路が紅葉からメダルを受け取り、かやのは石丸に詰め寄っていた。


「もしかしたらそのメダル、石丸さんなりにお祝いのつもりかもしれませんわね」

「とりま、銀ゲットだぜ!」

「善ーーーし!」


 かやのと西小路がハイタッチを決め、それを紅葉がにこやかに眺めていた。

第三話『スプリング・ハリケーン』完


最後までお読み頂き有難うございます。

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よろしくお願いします。


次回、第四話『ソウテイのミラージュ』

お楽しみください。

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