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リアドラ ーReturn to the Draftー  作者: Tsuyoshi&松山亮太
第三話『スプリング・ハリケーン』
28/128

#8

『ハハハハハ‼ 見ろ! これがあの時舐めた、アンタの血の力だ‼』


 ―――違う。それは憎しみの力だ。妖怪は元来、負の感情の力で強くなる。妖尾の継承もタネを明かせば、相手への嫉妬や怒り、また親しい者を喰らった際の悲しみで負の感情が強くなる。それによって、自分が相手から妖力を奪ったと錯覚しているだけに過ぎない。

 西小路はそれを異形と化した彼に伝えたかった。だが伝えられなかった。伝える間がなかった。


『センパイ、アンタは若くして六尾まで持つことが出来た。オレ達の憧れだったのに・・・・・・随分腑抜けちまったなぁ‼ オラオラ! 少しは反撃してみろよ!』


 化け狐は変化を遂げてから『おしゃべりは終わりだ』と西小路に一気に襲い掛かり、怒涛(どとう)のラッシュを浴びせかけている。

 それを西小路は必死に避けて、隙あらば角材や投擲(とうてき)武器で反撃を試みるが、全く効果がなかった。それどころか得物も折れ、投げるものも無くなり、身体にも少しずつ疲労の色が出てきて足がもつれてくる。

 それによりアクロバティックな動きも出来なくなっていき、徐々に相手の攻撃も(かす)りはじめた。

 気が付けば服はボロボロになり、身体のあちこちに傷が増えていった。


『センパ~イ、いつまで力の出し惜しみするんスか? いい加減にしないと、もう死んじゃうッスよ? ・・・・・・まぁ、こちらとしてはその方が助かるんスけど・・・・・・ねっ!』


 余裕そうな笑みで化け狐が西小路に蹴りを当て、そのまま壁に激突させる。西小路は「かはっ」と口から血を吐き、意識が飛びそうになる。


「ハァ、ハァ・・・・・・僕はこのまま死ぬのか・・・・・・人間の身体って不便だな・・・・・・」


 西小路の脳内に絶望の色が広がった。


『そろそろ楽にしてやるッスね』


 化け狐は口の端から涎を垂らして、その顎を大きく開く。鋭い牙がズラリと並び、妖しく光っている。

 もうあと一歩前に出れば西小路の頭に牙が届く。彼は眼前で大きく開かれた化け狐の顎の筋肉が脈動するのを、半ば諦めた目で見ていた。

 ガキィンッ! 化け狐の牙は西小路の目の前寸前で閉じられた。西小路は何が起こったのか分からなかったが、それよりも目の前の化け狐の方が戸惑っていた。


『・・・・・・な、何だ⁉』


 そして同時に自分の胴体に違和感を覚え、そこに目をやる。西小路も化け狐の目線を追いかけた。

 するとそこには、自分がいつも見慣れている人物の腕が、化け狐の毛を掴みながら胴をホールドしている。


「・・・・・・・・・テメェ、俺の相棒に何して・・・・・・やがんだぁあああああああああああああ‼」


 鋭い爪を地に食い込ませて立っていた両足が、一瞬フワッと浮いたかと思うと、そのまま後ろにズドォォォォォンッ‼ と轟音を立てた。かやのの強烈なジャーマンスープレックスが炸裂し、化け狐の脳天が地面に叩きつけられていたのだ。


「かやの・・・・・・ちゃん?」


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