#6
授業が終わり、キャンパス通りを歩きながら、紅葉はかやのにも体調の事を訊いた。
「かやのさん、お腹の具合は大丈夫ですか?」
「ん? あぁ、とりま血は止まったが、まだ少し痛ぇな」
かやのは食中毒なのだと紅葉はずっと思い込んでいたが、血と聞いて女性特有のものだと気付いた。彼女は慌てて隣にいる西小路に聞こえないように、小声でかやのに謝った。
「そういえば、早くそこの『箕面船場阪大前駅』が出来ると良いですわね。そうすればもっと便利になりますし」
キャンパスの前で紅葉が新御堂筋道路の方を見て、二人に話を振った。かやのは「便利になるのは助かるな」と紅葉に返すが、西小路は無言だった。
その後一同は解散し、西小路はかやのの部屋に来ていた。かやのは机の上のラジオをつけた後、手鍋でインスタントコーヒーを沸かしはじめた。
ラジオからはタッキー816みのおエフエムが流れている。
「いや~、しかしこの間は驚いたよ。まさか妖怪に襲われるなんてね」
西小路は先日の事をかやのに話すと、彼女は「ふーん」と興味なさげに、
「んなもん今更だろ」
そう答えながら、二つのキャンプ用タンブラーに珈琲を注ぐ。かやのの言葉に、「それもそうか」と西小路は納得した。
珈琲を飲んでいると、西小路の耳に気になる話題がラジオから流れてきた。栃木県那須町にある『殺生石』が綺麗に真っ二つになっていたのを近隣住民が発見したとの事だ。
「殺生石が・・・・・・? もしかしてあの狐・・・・・・その時に漏れた妖力を?」