#2
「―――まったく、僕まで怒られちゃったじゃないか」
「いきなり探偵とか言い出すんだ。そりゃ大声も出したくもなるわ」
式が終わった後、二人はまだ言い合いを続けていた。
「まぁ、探偵が不満なら、かや・・・・・・ゼクスは他に何か良い案でもあるのかい?」
西小路は苛立つかやのを更に怒らせないように、苗字ではなく下の名前で言い直す。
「ん~・・・・・・案なぁ・・・・・・うん、無ぇ」
「だろ~? だったら一旦僕の案に乗らないか?」
「百歩譲って探偵は良いとしてもよ、拠点とかどーするワケ?」
「うーん・・・・・・それならまずは物件を探そう!」
西小路は呆れるかやのをよそに能天気な声で次の行動を口にした。それから二人は周辺の不動産を片っ端から巡り、物件情報誌や店頭の物件情報、そして実際に店内に入って不動産スタッフにテナント相場を聞いて回った。
そして数時間後、箕面市立船場図書館前のベンチにうなだれる二人の姿があった。
「た、高い・・・・・・こんなはずでは・・・・・・」
「この辺どこもかしこも手が出ねぇな・・・・・・」
自分が考えていたプランの出鼻を箕面市の家賃相場によってくじかれた西小路は頭を抱え、その横でかやのは疲れた表情で情報誌を何度も無駄にパラパラとめくっている。
「あの・・・・・・」
「え?」
「あぁ?」
現実に絶望している二人に一人の品の良さそうな女性が少し遠慮しがちに声を掛けて、その声に反応する。声を掛けた二人の目が死んだ魚のようになっているのを見て、一瞬ギョッとしながら話を切り出した。
「先ほど、入学式で学長先生から注意をされたお二人ですよね?」
「ハハハ・・・・・・お恥ずかしいところを」
「んで? 俺らに何か用かよ?」
恥ずかしそうに頭をかいて笑う西小路の横で、女性に濁った目を向けてダルそうな口調でかやのは用件を訊ねる。
「あ、はい、その・・・・・・これから探偵業を始められると耳にはさみましたので。その・・・・・・もしそのお話が本当でしたら、お二人に是非ともお願いしたい事がありまして―――」
「願いだぁ?」
「ん? あれ? ・・・・・・って事は依頼って事ですか?」
女性は「はい」と答え、図書館内のお洒落なカフェを指さした。
「ここではなんですので、あそこのカフェでお話ししませんか? 相談料代わりと言ってはなんですが、お昼ごちそういたしますので」
「そういや腹減ったな」
「あそこのハンバーガー、結構評価高いみたいですよ」