#8
夕方になり、一同はかやのの働くアロハカフェに来ていた。西小路と紅葉は客として、かやのは店員として。テーブル席に座っている二人の話題は、当然かやのの事についてだ。
「しかし驚いたよ。まさか、かやのちゃんがピアノを弾けたとはね」
西小路がかやのの方を見ると、彼女は夢中でハンバーガーを作っている。
すると紅葉のスマホに何かの通知音が鳴って、紅葉がスマホを見ると「えっ?」という顔をした。それはユーチューブの登録チャンネルが最新動画を配信した時の通知音で、紅葉は通知からそのまま動画にアクセスをした。
それは、かやののピアノ演奏を誰かが撮った映像だった。この演奏動画が凄いというタイトルで、あの場にいた誰かの撮影動画を拾って編集し直した内容だった。有名な配信者の動画だったので、閲覧数・コメント数が凄い数字になっていた。
コメントの中には探偵事務所についてのものもあり、まさかと思った紅葉は、事務所のホームページをスマホに表示させた。するとサイトへのアクセス数が一気に伸びていた。
「ちょっ、ちょっと西小路さん! これ見て下さい‼」
紅葉にスマホを向けられて、西小路はどれどれとサイトを見る。
「えっ? ・・・・・・は? えぇぇぇぇ‼」
表示された数字に、西小路も思わず声を上げた。二人が驚いているところに、かやのがハンバーガーを二つ持って、二人の席に運んできた。
「だいぶこの店の味を掴んできたぜ。ホレ、冷めねぇうちに食え」
かやのはニカッとした笑いで二人の前に料理を置いた。その顔は先日店の外から紅葉が見た、楽しそうにハンバーガーを作っている時のかやのの顔だった。