#6
「あら、想像していたよりも埃は溜まってませんね。これならすぐ終わりそうですわね」
「ハハハ、一応少しずつ掃除はしてたからね。ところで何でマルちゃんが?」
「マルちゃん? あぁ石丸さんの事ですか? この子は寂しがり屋なので」
紅葉は石丸も連れて来ており、石丸もぴったりと紅葉にくっついている。
それから二人は掃除用品を取り出し、部屋の隅々を掃除し始めた。西小路の言った通り、埃などの汚れは少なく、掃除は案外早く終わらせることが出来た。
掃除が終わってひと段落し休憩しているところに、ちょうど家具業者が到着したらしく、部屋のインターフォンが鳴る。石丸は終始部屋の真ん中でコロコロと転がっていたようだ。
「あっ、家具が来たかな? はーい、今出ます。マルちゃん、ちょっとごめんね」
西小路は石丸を避けて、玄関に向かう。ドアを開けると業者が家具類を持って立っていたので、そのまま中に入ってもらう。部屋のレイアウトを書いた紙を見ながら、彼らに組み立てと配置をお願いした。
約一時間くらいで作業は終了し、西小路と紅葉は小物の包装を取り、家具の上や、内部に小物の配置を始めた―――。
「―――このコーヒーミルはどちらに置きましょうか?」
「えっと、それはそこの棚に置いてくれるかな?」
それからしばらくして作業も終わり、事務所内は玄関から見て右側に応接室。そして、左側にはカウンターテーブルを配置したカフェを思わせる、喫茶スペース兼お茶汲み用の給湯スペースとなった。
家具や小物は全てアンティーク調で揃えられていた。
「思った通り、上品で素敵な内装になりましたわね」
「いや~、本当に紅葉ちゃんには頭が上がらないよ。本当にどうもありがとう」
「ふふっ、良いんですよ。それじゃあこれから・・・・・・」
『ぐぅ~~~~~』
紅葉が何かを言いかけた時、二人の腹の虫が同時に鳴いた。その音の大きさに思わず二人とも笑いがこみ上げた。
「アハハハハハッ、凄い音だったね。何か食べに行こうか?」
「ウフフフ、そうですわね。あ、それなら『みのおモール』に行きませんか? あそこの美味しいパン屋さんのカレーパンが食べたくなっちゃいました」