#4
それから、服の仕立てが終わるのを待つだけとなった二人は、他に必要な物は無いか話し合う。すると、集客方法としてホームページとチラシが必要という結論になった。
一度、西小路の部屋にノートパソコンを取りに行き、キャンパス入り口付近のテーブル席に二人が座った。西小路の要望を聞き、紅葉の女性ならではの細やかな感性と配慮のバランスがとれたデザイン案をまとめる。
それからしばらくして、なんとかその日のうちにホームページとチラシのデザイン原本を完成させることが出来た。
「なんとか完成しましたわ。あとはこれを刷れば良さそうですわね」
「僕だけだったら、こんなに見易くてかっこいいチラシもホームページも作れなかった。紅葉ちゃんがいてくれて助かったよ」
「チラシの方は明日にでも印刷所で依頼しておきますわ。今日はもう遅くなってしまったので、これで失礼させていただきますね」
西小路は頷きながら紅葉に礼を言い、寮の方へ歩いていった。
寮に戻る西小路の後ろ姿を見送った後、紅葉はかやのが働くと言っていたアロハカフェの前に立っていた。中の様子をガラス越しに覗き込むと、かやのは店長らしき人物からハンバーガーの作り方を教わっているような様子が見てとれた。
子供のような無邪気な顔でハンバーガーを作る彼女の姿に、紅葉は胸にモヤモヤしたものを感じた。
自分や西小路が探偵事務所設立に必要な物を揃える為に、連日あちこち回っている苦労も知らないで、彼女は呑気な顔で楽しそうにアルバイトをしている。
また、大学の講義でも代返が使えない講義以外は西小路に代返を任せて、自分はサボってどこかに消えていくかやのに対し、募っていた不信感は完全に苛立ちに変わっていた。