#3
翌日の授業終わりに西小路と紅葉は、探偵事務所作りの買い出しの続きに出かけた。紅葉はかやのも誘おうとしたが、彼女は気付けば姿を消していたので結局誘えなかった。
前日と同じく西小路に非協力的な態度のかやのに対して、紅葉は不信感に近い感情を覚えた。しかし気分を変えて、本日行く店について説明をする紅葉。
「今日はユニフォームを買いに行きましょう。探偵と言えば、スーツ姿のイメージが浮かびますし」
そう言うと紅葉は西小路を箕面市船場の『アバウト・リーフ』というオーダーメイドの洋裁店に連れて行った。店内に入り、さっそくスタッフにどういう服を作ってほしいか、西小路の要望を伝える。
「では寸法を測らせていただきますね」
慣れた手つきで西小路の寸法をスタッフが測っていき、その次に紅葉も測ってもらう。
「あれ? 紅葉ちゃんも何か服作ってもらうの?」
「いやですわ、私も探偵の助手というか、受付や雑務をお手伝いするわけですからね。メイド服を、と思いまして」
西小路が「えっ?」と困惑していると、紅葉は先日自分がかやのに代わって、西小路を手伝うと言った事を笑顔で話す。
「えぇ? いやいやいや、手伝うって・・・・・・そこまで?」
「はい、私はあの時、そのつもりで西小路さんをお手伝いすると申したのですよ」
若干ドヤ顔で話す紅葉に戸惑いながらも、西小路は内心助かると思っていた。
それはテナントが決まった日に、西小路がかやのから「探偵の方は一人でやれ」と言われてから、これからの先行きに不安を感じていたからだった。
「・・・・・・紅葉ちゃん、ありがとう」
「はいっ!」
その不安を紅葉に分かってもらえた、いや、察してもらえていたのだと感じた西小路は、彼女に素直な感謝の言葉を口にした。紅葉もあの時の決意や、今それを行動に起こしている自分を彼に認めてもらえた気がして嬉しかった。