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リアドラ ーReturn to the Draftー  作者: Tsuyoshi&松山亮太
第十一話『黄金牡丹』
105/128

#4

 しばらくパズルに熱中していたかやのは、残り一ピースというところまで来ていた。思わずニヤリとしながら、ピースが入っていた箱に手を伸ばすが、中には何も入っていない。


「・・・・・・あれ?」


 最後の一ピースが見当たらず、箱を裏返したり、床や辺りをキョロキョロするかやの。その様子に気付いた西小路が声を掛ける。


「どうしたの、かやのちゃん?」

「いや、それがさー、あと一つ見当たらねぇんだよ」


 かやのが未完成のパズルを指さした。西小路がパズルを見ると、それは琥太郎氏を真ん中に、亡くなった彼の妻、そして明をはじめとする四人の兄弟が写った写真をパズルにしたものだった。そして欠けた部分は前当主が持つ杖の部分だった。


「お父様はこのパズルを完成させたら、この書斎に飾るんだ、と生前言ってました。だけど、途中で・・・・・・結局完成させることが出来ず、亡くなってしまいました」


 美樹が切なそうな表情でパズルを眺める。


「かやのさん、ありがとう。ここまで作って下さり、お父様も喜んでいるはずです」


 そう言って美樹は、壁に掛かっている空白の(がく)(ぶち)を外そうと手を掛ける。かやのは完成させたかったのか、舌打ちをした。


「これじゃまだ飾れねぇよ」

「皆さんの顔は全員分揃ってますのに・・・・・・」


 紅葉も残念そうな表情を浮かべる。西小路もピースを探す。その途中で、書斎の隅に帽子やコートが掛かった木製ポールハンガーに立てかけられた杖が目に留まった。この部屋の中では珍しく、豪華な装飾も無い()(ぼく)な杖だった。

 西小路はその杖を手に取ってみると、木製の杖にしてはまるで金属の棒を持っているかのように重く、その違和感に思わず「え?」という顔をする。西小路はどういう事だと、色んな角度から杖を眺めていた。


「どうした、ダンテ?」

「欠けてるピースの部分がこの杖だったから気になってさ」


 かやのは「ふーん」と言いながら、


「鍵っつったら、この先端ん中にでも隠してんじゃねーの?」


 と、杖の先端の滑り止めゴムを引っ張ると、ポンッと勢いよく外れ、かやのの手から離れて床に転がっていった。


「あっ」


 ゴムが書斎の入り口に転がっていくのを、スッと一人の男性が拾いあげた。ゴムを拾ったのはオリヴァーで、その隣には明もいた。


「確かに、その杖の先端には鍵らしき形状の細工がしてあるのは、私も見つけたんだが」


 西小路が杖の先を見ると、鍵・・・・・・というよりは、面の部分に(おう)(とつ)があり、まるで大きな印鑑のような形状をしていた。


「しかし、残念ながら、あの扉の鍵ではないようだ」


 オリヴァーは拾ったゴムを西小路に手渡し、


「私はこの家の前当主錦織琥太郎氏に、生前雇われた顧問弁護士のオリヴァー・ウィリアムズ。キミは?」


 と、自己紹介をした。


「僕は美樹さんの依頼で、この部屋の探し物調査に来た探偵の西小路ダンテです」

「探偵? 失礼だが、随分お若いように見えるが?」


 二人の会話を()くように、明が声を荒げた。


「おい、美樹! お前探偵なんて雇ってどういうつもりだ⁉」

「西小路さんは大阪箕面大学の学生さんで、私の後輩の子から紹介して頂いたの」


 美樹は明に、自身のスマホでトリックスターフォックスのホームページを見せる。明は業務内容をざっと見るなり、鼻で笑い、


「探偵という割には、人探しだ? 所在調査に浮気調査? 地味な業務ばかりじゃないか。ふん・・・・・・(しょ)(せん)、学生の()()(ごと)か」


 と、美樹にスマホを投げて返す。明のその言葉に、オリヴァーも鼻で笑った。


「錦織さん。本来、探偵の業務とはそういうものですよ」


 そして、西小路の方を向き、静かに微笑を浮かべた。


「大阪箕面大学の学生さんか。法学部に通っている私の息子と同じ大学だね」

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