#3
書斎で各々行動している時に、西小路は壁に掛かっている猟銃に目をつける。
「美樹さん、あれは本物ですか?」
「えぇ。父は狩猟を得意としておりましたので、その時に使っていた物です」
「よくパパとは野鳥狩りをしに行ったものさ。美樹、この人達は誰だい?」
次男の透が部屋に入ってきて、西小路に聞こえるように話しかける。そして妹の美樹に西小路達の素性を尋ねると、
「この方は探偵の西小路さんよ。私が依頼したの」
美樹が西小路の方に手をさして、透に紹介する。すると透は「そうか・・・・・・」と言って壁に掛かっていた猟銃を手に取る。そして銃口を西小路に向けた。
「透兄様! 何を⁉」
「つまりハイエナが増えたわけか。キミ、若いのに探偵やってんの?」
「・・・・・・悩みを抱えるクライアントの為に調査をさせてもらっています」
銃口を向ける透に、真剣な眼差しを向ける西小路だが、握った拳は怒りに震えていた。彼にとって銃は悲しみと憎しみの記憶しかない。
かやのもパズルの手を止め、透が少しでも引き金を引こうものなら、間髪入れずに殴り掛かろうと、鋭い殺気を放っていた。その時、
「私達はこちらの美樹さんの依頼を受けて来たのです! 今すぐ銃を下ろしなさい!」
紅葉が自らの危険を顧みず、西小路の前に両手を広げて立ち塞がり、透を睨みつける。
「おや・・・・・・誰かと思えば、小野原ホールディングスのご令嬢様ではありませんか。これは大変なご無礼を。ご心配なく、銃弾は入ってはおりませんよ」
透は銃口を下げて、紅葉に一礼した。
そんな透に紅葉は睨みつけたまま、語気を強める。
「そういう問題ではありませんわ!」
「ありがとう、紅葉ちゃん」
気丈に振る舞いながらも震える紅葉の肩に、そっと手を置く西小路。本当は相当怖かったのか、紅葉は緊張が解けヘナヘナとその場に腰を抜かした。そして西小路を見上げ微笑む。西小路も紅葉に寄り添うように片膝をつく。
やれやれ、といった様子でかやのもパズルの続きを始めた。