#10(完)
その日の夜。エイクは自室のバルコニーで散り始めているバラを剪定している。目の光は消え、無気力な表情で。机の上には西小路宛ての破れたラブレターが夜風に揺れている。
カサッ、机から破れた紙片が落ちた。パチンッ! バラの花のついた枝を切り落とした。彼の髪色によく似たゴールドバニーのブーケが散るように、花が地に落ちた。それと同時に、エイクの瞳から一筋の涙が頬を伝う。
「・・・・・・うっ・・・・・・うぅ・・・・・・」
それから堰を切ったかのように、次々と大粒の涙が零れてくる。子供のように声を上げて号泣するエイク。
『失恋がこんなにも苦しいものだとは思わなかった・・・・・・・・・』
自分に告白して、断られた時の女の子が泣いている姿がフラッシュバックする。あの時、あの子はこんなに苦しかったんだ。今なら彼女の気持ちがよく分かる。
エイクは下に落ちたバラの花を手に取り、胸に抱く。そして、
『崩したくない―――』
涙でぐしゃぐしゃになりながら、心に浮かんだ西小路の笑顔。今の関係を壊したくない。
後日、食堂ではいつものメンバーの姿があった。西小路、かやの、紅葉、ローガン、王、そして、エイク―――。
皆で笑い合いながら、ランチを楽しんでいる『友達』。今はこのままでいい、と。西小路を眺めながら、少し切なそうな表情でエイクは小さく微笑んだ。
第十話『ゴールドバニー』完
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次回、第十一話『黄金牡丹』
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