#9
学食の食堂で一人静かにランチを食べているエイク。そこに西小路が現れた。
「エイク君、となり、いいかな?」
西小路がランチを持ってエイクに笑顔で話し掛けた。
「う、うん」
突然の思いもよらない嬉しい展開に、エイクは慌てて返事をしながら椅子を引く。
「ありがとう」
西小路はエイクにお礼を言って隣に座った。彼の笑顔が眩しく見える。エイクが内心喜んでいると、西小路のあとに、ローガン、紅葉、かやの、そして王が続いてやってきた。ローガンは西小路の隣に座り、ローガンの正面には紅葉、紅葉の隣で西小路の正面にはかやの、そしてかやのの隣でエイクの正面には王が座った。静かだったテーブル席が一気に賑やかになった。
「ランチは皆で食べるとベリーデリシャスですネ! グレートフレンド!」
「そうだね、こうして友達同士で集まって食べると楽しいよね」
「んだなー」
「・・・・・・・・・・・・」
大げさな身振りのローガンの言葉に同調する西小路とかやの。しかしエイクはその言葉に無言で俯いた。
「ハァン? オマエはマダ友達じゃネェヨ、西小路。かやのサ~ン、あーん」
王は西小路に反抗してから、かやのにトンカツを食べさせようとする。が、かやのは王が箸で掴んでいるカツを手で掴み取り食べる。王は「ガーン」とショックを受けている。
「皆フレンド同士という事は・・・・・・小野原サンともグレートフレンド⁉ Fu~!」
「ウフフ、賑やかなのは良い事ですわ」
ワイワイと賑やかな会話が溢れる中、エイクが西小路に切り出した。
「あ、あの・・・・・・西小路君。これ・・・・・・ひとつ食べるかい?」
エイクは皿のおかずを指差す。西小路は、
「良いのかい? ありがとう。じゃあ僕のもひとつ」
そう言ってニッコリ笑いながら互いのおかずを交換する。エイクは嬉しくて頬を赤らめながらニッコリ笑った。
すると西小路の隣にいたローガンも、
「OH! グレートフレンド! ミーのもシェアするデース!」
と、おかずを差し出す。西小路がローガンの皿から料理を貰おうとした時に、西小路の日々鍛えられている胸筋がローガンの目に留まる。その瞬間、ローガンは西小路の肩を抱き、彼の大胸筋をポンポンとタッチする。
「ジムには来なくなったけど、ちゃんとエブリデイ鍛えてるようデスネ! 肩も前よりビッグになってきてマース!」
西小路はジムで中年ボディビルダーから尻を掴まれたトラウマを思い出し、
「や、やめてくれ、ローガン! 僕はそういうの苦手なんだ」
鳥肌を立てながらローガンのボディタッチをたしなめようとする。
「ソーリー、グレートフレンド。悪気はないんだ」
その二人のやりとりを見ていた王が、鼻で笑いながら茶々を入れる。
「ほぉ・・・・・・西小路。オレ、オマエの事ジェンダーだト思ってたヨ。ちナみにオレは異性愛者ダガな。かやのサ~ン! 今度コソ、あーん」
再びカツを食べさせようとする王と、またも手で掴み取るかやの。そんな二人の光景を見ながら、西小路は苦笑する。彼の目には、かやのの後ろに堕天使姿のゼクスが重なって見えているからだ。
「ハハハ・・・・・・僕も同性愛者では無いかな」
それを聞いてエイクはハッとなった。目の前の景色がどんどん色褪せていく。まるで視界が遠のいていくように・・・・・・。