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それではお楽しみ下さい。
箕面市船場。まだ日が昇り切っていない朝霧漂う杉谷公園。
桜の花びらがはらはらと舞っている。
満開の桜の木の下で、スーツ姿のギャル風の美女が草むらの上で胡坐をかいて座っていた。彼女の頭の上にはウグイス、膝の上には野良猫がちょこんと乗っている。
「・・・・・・うーん、しっかし、どうすりゃ良いのかねぇ」
彼女は赤いメッシュの入った銀髪を掻きむしりながら、右手に持ったクシャクシャになった紙を見つめて、唸っている。
「ここにいたんだ、かやのちゃん!」
スーツ姿で金髪青眼の爽やかな青年が、ギャル風の美女の元へ手を振りながら駆け寄ってくる。
「女みてぇな呼び方すんじゃねぇよ、ダンテ!」
かやのと呼ばれた褐色系外国人風のギャルが、ダンテと呼ばれた白色系外国人風の青年に、その場でロメロ・スペシャルを掛けた。
「イダダダダダダダ! だって呼びやすいんだもん! 待って、折れる折れる!」
ダンテの関節がミシミシと悲鳴を上げていた。
その後、二人は大阪府では有名な国立大学『大阪箕面大学』へ向かって歩いていた。
「つーか、ダンテは何かイイ案思いついたか?」
「おいおい、僕の事は西小路くん、だろ? かやのちゃん」
「俺にはゼクスっつー名前があんだがな!」
「あ、かやのちゃん、会場着いたよ」
今日は大阪箕面大学の入学式なのだ。彼らの他にも晴れ着やスーツに身を包んだ入学生たちが友人や親と一緒に会場に入っていく。
式の時間になり学長の挨拶が始まり、新一回生たちはこれからの大学生活に期待や希望に満ちた笑顔で話を聞いている・・・・・・かやのただ一人を除いては。
「おいダンテ、お前そんな呑気にしてる場合じゃねぇだろ。俺らにはそんな余裕ねぇんだぜ? その間に結果出さねぇと、また長ぇ期間・・・・・・」
「いやいや、僕も僕なりに考えて、良いものを見つけてきたんだ」
そう言ってニカッと笑う西小路を睨みながら話をするかやの。時折周りにも聞こえる声で語気を強める彼女に周囲の生徒たちもチラチラと視線を向ける。
「―――で、あるからして、んんっ、ゴホン!」
そんな様子の二人に対して壇上の学長も咳払いで注意を匂わす。が、かやのには効果は無いようだ。一方の西小路は一応空気を読んで、学長に軽く会釈をする。そして、かやのに探偵事務所のチラシを見せながら、自身が思いついた案を話した。
「はぁ⁉ 探偵だぁ?」
「いやいや、これは我ながら良い案だと思うよ? 人探しとか探し物とか、そういった依頼をこなせばこなすだけ、依頼者の助けになって喜んでもらえる。つまりこれこそ善い行いをするという事じゃないかい、かやのちゃん?」
「そんなんでメダルが集められんのかよ」
西小路が探偵の業務内容を説明すると、それに噛みつくかやの。
どうやら二人は『メダル』という物を集めなければならないらしい。
「それはやってみないと分からないさ」
「はぁ⁉ やってみねぇと分からねぇだと⁉ そもそもどうやって手に入れ―――」
「そこの二人、静かにしなさい!」
二人のやり取り、というか主にかやのの怒声に、壇上から注意が飛んだ。
「探偵・・・・・・」
そんな周囲から悪目立ちした二人にずっと視線を逸らさず見つめ続ける人影があった。